著者
寺田 剛
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.101-122, 2014

奥(2003)のStathmopoda sp. 1とこれに近縁であると考えられる種について検討し,S. pedella種群を認めた.また,5新種フトオビマイコガ(S. pullicuneata n. sp.),セグロフトオビマイコガ(新称)(S. atridorsalis n. sp.),ネグロマイコガ(新称)(S. dorsioculella n. sp.),スジボソマイコガ(新称)(S. sericicola n. sp.),ヒダナシオオマイコガ(新称)(S. centihasta n. sp.)を含む本種群の日本産7種について記載および再記載を行った.さらに7種について成虫の外見的特徴,翅脈,雌雄交尾器を図示し,比較した.日本産のS. pedella種群は外見的には胸部や前翅の斑紋,後翅の前縁ひだの有無で識別できるが,オオマイコガとヒダナシオオマイコガの雌は外見での識別が困難である.本種群の分布,幼虫の食性に関しては情報が不足しており,さらに調査が必要である.1. Stathmopoda pullicuneata n. sp.フトオビマイコガ 開張7.3-14.2mm.前翅長3.5-6.6mm.胸部および前翅は黄土色であり,中胸前縁,1/4,中央にアーチ状の黒褐色帯が走る.前翅基部,1/3,2/3に黒褐色帯が走り,前翅1/3の帯の前縁付近と中央から黒褐色条が走り,前者は翅頂付近まで達する.雄の腹部第8節背面に毛束がある.雄交尾器の挿入器には短いコルヌツスが6つ程度ある.雌交尾器の交尾嚢に1つのシグヌムがあり,ドゥクツス・セミナリスにはブラが発達する.成虫は6-8月に採集されている.本種は奥(2003)によってフトオビマイコガStathmopoda sp. 1として記録され,寺田・坂巻(2013)においても未同定種として扱われている.中国から記載されたS. neohexatyla Li and Wang,2002に酷似するが,雄交尾器の挿入器にコルヌツスが無い点で異なる.分布:本州,四国,九州.寄主植物:不明.2. Stathmopoda pedella(Linnaeus,1761)キイロオビマイコガ 開張11.1-13.8mm.前翅長5.1-6.5mm.フトオビマイコガに似るが,胸部および前翅は黄色であり,胸部前縁は黒褐色である.前翅1/3と2/3の帯は黒褐色条で繋がる.前翅頂には黒褐色の斑紋がある.雄交尾器の挿入器にはコルヌツスが4つある.雌交尾器の交尾嚢に2つのシグヌムがある.成虫は5月と7-8月に採集されている.ヨーロッパでは幼虫は秋に寄主植物の未熟な果実に潜り,主に種子を摂食し,その後地表に降りて繭をつくることが報告されている.分布:北海道,本州,四国;ヨーロッパ,ロシア南東部,北アメリカ.寄主植物:国内では不明.ヨーロッパではハンノキ属2種(カバノキ科)を寄主とすることが知られる.3. Stathmopoda atridorsalis n. sp.セグロフトオビマイコガ 開張12.7-15.1mm.前翅長5.9-6.9mm.前2種に似るが,胸部は暗褐色であり,中胸後縁は白色である.前翅は明るい黄土色であり,前翅1/3,2/3に暗褐色の斑紋がある.斑紋は暗褐色条によって繋がり,2/3の帯から翅頂にかけて暗褐色条が走るが不明瞭である.雄の腹部第8節背面に三日月状の硬化した構造が1対ある.雄交尾器の挿入器には短いコルヌツスが10以上ある.雌交尾器の交尾嚢に2つのシグヌムがあり,一方が大きい.成虫は7-8月に採集されている.分布:北海道,本州.寄主植物:不明.4. Stathmopoda dorsioculella n. sp.ネグロマイコガ 開張13.5-15.6mm.前翅長7.0-7.5mm.前翅は明るい黄土色であり,前翅基部に黒褐色帯が走り,後縁基部付近からCuP脈の中央にかけて後縁に沿って黒褐色条が走る.前翅基部から褐色条が3本走り,黒褐色条から褐色条が1本走る.雄交尾器の挿入器には短いコルヌツスが7つ以上あり,基部が融合する.雌交尾器の交尾嚢に1つのシグヌムがあり,ドゥクツス・セミナリスにはブラを欠く.成虫は8-9月に採集されており,奄美大島では11月にも採集されている.分布:本州,四国,奄美大島.寄主植物:不明.5. Stathmopoda sericicola n. sp.スジボソマイコガ 開張14.0-17.0mm.前翅長6.5-8.2mm.胸部および前翅は明るい黄土色であり,中胸前縁付近,1/4,中央にアーチ状の黒褐色帯が走る.前翅CuP脈上と後縁基部付近からCuP脈の中央にかけて後縁に沿って黒褐色条が走る.前翅基部,2/5,2/3,翅頂付近に黒褐色の斑紋があり,2/5と2/3の斑紋は黒褐色条によって繋がる.雄の腹部第8節背面に半円状の硬化した構造が1対ある.雄交尾器の挿入器にはコルヌツスが4つある.雌交尾器は前種に似る.成虫は4-5月と7月に採集されている.幼虫は寄主植物のアブラムシの虫こぶで見つかる.分布:本州,四国,九州.寄主植物:シロダモ(クスノキ科).6. Stathmopoda centihasta n. sp.ヒダナシオオマイコガ 開張14.5-15.3mm.前翅長6.4-8.1mm.前種に似るが,中胸中央付近に1対の黒褐色の斑紋がある.前翅基部,1/3,3/5に黒褐色の斑紋があり,3/5の斑紋から翅頂にかけて黒褐色条が走る.雄の腹部第8節背面に棍棒状毛の束がある.雄交尾器の挿入器にはコルヌツスが2-5つある.雌交尾器は前2種に似るが,ドゥクツス・セミナリスの先端付近が太くなる点で異なる.成虫は7-8月と10月に採集されている.分布:本州,九州.寄主植物:不明 7. Stathmopoda stimulata Meyrick,1913オオマイコガ 開張11.5-18.4mm.前翅長5.4-8.7mm.前2種に似るが雄の後翅に大きな前縁ひだを形成する.前種同様雄の腹部第8節に棍棒状毛の束があるが,前種よりも先端が丸い.雄交尾器の挿入器には短いコルヌツスが4つある.雌交尾器の交尾嚢にラメラを持たず,ドゥクツス・セミナリスは短い.成虫は4-9月に採集されており,琉球諸島では2-3月にも採集されている.幼虫は寄主植物の果実を摂食する.分布:北海道,本州,四国,九州,屋久島,奄美大島,沖縄本島,石垣島,西表島,与那国島;中国,韓国,台湾,ベトナム,タイ,マレーシア,ブルネイ,インドネシア,インド,スリランカ.寄主植物:ヤブニッケイ(クスノキ科).

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