- 著者
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宇野 功一
- 出版者
- 日本宗教学会
- 雑誌
- 宗教研究 (ISSN:03873293)
- 巻号頁・発行日
- vol.88, no.3, pp.673-699, 2014
祈りとは、人格的または非人格的な絶対的超越者の存在を前提として、何かに注意を集中することで、自己や他者や世界の存在の様態を自己の内面で変革しようとする行為である。この定義に基づき、グルジェフの祈祷論を検討する。彼は祈る対象として、祈りに専念しやすいからという理由で、神・祈祷者自身・祈祷者に最も近しい生者を措定した。そして祈られた願望を達成するのは非人格的な神や、祈祷者に最も近しい生者ではなく、祈祷文などにたいする祈祷者自身の注意の集中だと考えた。それは自己観察兼自己想起を伴う修行法でもあった。彼はまた、祈祷者が適切なやり方で祈ればその肉体に具わっている磁気という物質が変容すると説いた。彼はさらに、この変容は肉体にたいする魂であるアストラル体の形成を助けると説いた。彼の祈りは言語の使用に重きを置いた、自己の存在の様態の変革を志向するものであった。