- 著者
-
馬場 光子
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.7, pp.23-32, 2007-07-10
朗詠・今様等の歌謡の実態は、残された記録、記録者のまなざしによっているといえる。本稿では、今様歌初出の『紫式部日記』とその後の官僚日記に今様と朗詠との関わりの差異をさぐる。ついで院政期承安四年九月今様合せの十三日の御遊を『吉記』『吉野吉水院楽書』『たまきはる』等に読み、とりわけ『玉葉』に書かれなかった記事に琵琶をこそ重んじる反「今様合せ」の意識をよみとる。そしてこの平安朝末期院政期の意識が逆に『梁塵秘抄口伝集』をこの世に残すことになったあやにくな流れをたどる。