- 著者
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高橋 明彦
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.11, pp.69-80, 2005
楳図かずおが「恐怖」をどのように描いてきたかを検証した。「恐怖マンガ」という言葉を作ったのは楳図であるが(一九六一年)、まず、それ以前の作品の特徴を民俗性、怪奇性、幻想性の三点において検証した。ついで、これらを統合して恐怖マンガという語彙が獲得され、「怪奇」と区別しうる「恐怖」という概念が成立する。ついで、一般に言われる、楳図の描く恐怖モチーフが「怪奇」から「恐怖」へ変遷したとする説を再検討した。「怪奇」と「恐怖」とは変遷可能な同位対立的関係にはなく、「恐怖」とは「怪奇」を包摂する根本概念なのである。また、その包摂関係を成立させているのが、楳図における認識論的な遠近法主義である。加えて、神を描く存在論的な在り方についても論じた。