- 著者
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永井 聖剛
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, no.12, pp.42-53, 1997
明治四〇年三月に『文章世界』は「写生と写生文」という特集を組んだ。「写生と写生文とは、今の文壇を動かしつゝある一問題である」と特集の序文は敬意と親近感を表明しているが、その内実は「写生文」と「今の文壇」との間に横たわる断絶を強調するものであった。また同時に、その時期は、高浜虚子が「写生」に限界を感じ、それを「小説」において克服しようとしていたときでもあった。本稿は、同時代の虚子の試行を考慮に入れながら、自然主義の牙城ともいわれた『文章世界』が「写生と写生文」について物語ることの意味を探ろうとするものである。