著者
永井 聖剛 Carl Gaspar
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第7回大会
巻号頁・発行日
pp.24, 2009 (Released:2009-12-18)

自人種の顔と比較し,異なる人種の顔に対する弁別成績等が低下する(他人種効果).本効果は自人種顔への日常的な接触によって説明されるが,その生起因については不明な部分が多い.本研究では個々の顔特徴(左目,右目,左眉毛,右眉毛,左目+左眉毛,右目+右眉毛,鼻,口)で他人種効果が生じるかを調べ,この効果の生起に重要な役割を果たす顔特徴を同定した.日本人被験者18名が参加し,顔全体,あるいは個々の顔特徴のみが提示され,個人弁別課題(10AFC)を自人種顔/他人種顔セットに対して行った.実験の結果,顔全体を提示した場合に加えて,左目,右眉,鼻の3つの特徴を個別に提示した場合にも,他人種効果が生じることが示された.これまで他人種効果は布置的な(configural)処理が関していると示唆されていたが,局所的な特徴の貢献に関しては報告されたことが無く,本結果は他人種効果の生起メカニズムに理解に重要な知見を提供するものといえよう.
著者
永井 聖剛
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.23-38, 2020-05-15 (Released:2021-05-15)

明治二十年代に新しい日本の主導者として注目された「青年」は、明治三十年代後半、青年心理学という科学的言説によって、不安定で危険な世代として意味変容を余儀なくされた。時代は彼らに「修養」すなわち自(みずか)ら己(おのれ)を律し、身を立てることを求めた。修養ブームの到来である。またこれは同時に、すでに青年期を終えた者、すなわち〈中年〉の誕生をも意味していた。本稿は、自然主義文学の担い手を〈中年〉と定位し、彼らの「おのずから・あるがまま=自然」を受け容れる思考が修養的な激励とは対極的な、いわば同時代における対抗言説とでも呼ぶべきものを形成していたことを跡づけたものである。〈中年の恋〉を描いた「蒲団」以降の自然主義文学は、〈中年〉的な思考様式によって織りなされていたのである。
著者
永井 聖剛 山田 陽平 仲嶺 真
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.90.17342, (Released:2019-06-20)
参考文献数
28
被引用文献数
2

Previous studies have shown that the physical movements of participants influence creativity thinking. We examined whether another type of movements (bigger or smaller arm movements) modulates creative idea productions. In Experiment 1 participants were required to generate new names for rice after performing bigger or smaller arm movements. Bigger arm movements were associated with more divergent idea productions (e.g., non-typical ideas) compared to smaller arm movements. In Experiment 2, another task was used to generate as many ideas as possible for creative gifts the participants might give to an acquaintance, and the results showed the possibility that bigger arm movements led to more flexible idea generation than did smaller one. Taken together, the current study suggested the size of movements modulated creative thinking: bigger ones increased divergent creative thinking, possibly because bigger physical movements facilitate the divergent cognitive processing mode.
著者
川上 直秋 永井 聖剛
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.88.16057, (Released:2017-11-10)
参考文献数
43

It is well known that cognitive fluency affects various attitudes. We demonstrated that a subjective feeling of fluency, induced by repeated exposure to handwritten words, increases the acceptance of persuasive messages. Participants were repeatedly exposed to a set of handwritten words written in Japanese. In a subsequent test phase, they were required to rate the handwritten messages. The results showed that when the personal relevance of the messages was low, repeated exposure facilitated acceptance of messages written by the same person who had written the previously exposed words. This observation implies that we might make irrational decisions according to the ease with which the message can be processed, rather than according to the validity of message content.
著者
川上 直秋 永井 聖剛
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.546-555, 2017 (Released:2018-02-25)
参考文献数
43

It is well known that cognitive fluency affects various attitudes. We demonstrated that a subjective feeling of fluency, induced by repeated exposure to handwritten words, increases the acceptance of persuasive messages. Participants were repeatedly exposed to a set of handwritten words written in Japanese. In a subsequent test phase, they were required to rate the handwritten messages. The results showed that when the personal relevance of the messages was low, repeated exposure facilitated acceptance of messages written by the same person who had written the previously exposed words. This observation implies that we might make irrational decisions according to the ease with which the message can be processed, rather than according to the validity of message content.
著者
永井 聖剛
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.42-53, 1997

明治四〇年三月に『文章世界』は「写生と写生文」という特集を組んだ。「写生と写生文とは、今の文壇を動かしつゝある一問題である」と特集の序文は敬意と親近感を表明しているが、その内実は「写生文」と「今の文壇」との間に横たわる断絶を強調するものであった。また同時に、その時期は、高浜虚子が「写生」に限界を感じ、それを「小説」において克服しようとしていたときでもあった。本稿は、同時代の虚子の試行を考慮に入れながら、自然主義の牙城ともいわれた『文章世界』が「写生と写生文」について物語ることの意味を探ろうとするものである。
著者
永井 聖剛
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.23-35, 2018-06-10 (Released:2023-07-01)

一般に、田山花袋文学におけるニーチェ思想の影響は、「美的生活論」(高山樗牛)を経由した「本能の満足」の主題化として認識されている。本稿が考察するのは、ニーチェの同時代読者としての花袋が、その弱者道徳批判(ルサンチマン)の思想をどう摂取し、小説作品に取り込んできたかである。そこで明らかになったのは、花袋がニーチェ思想を明らかに誤読し、そればかりか、〈自然〉の名のもとに、弱者を救済する反ニーチェ的な思想を構築していたことである。ただしそれは、花袋のオリジナルの思想というよりは、樗牛、蘆花らの同時代テクストとの相互関連性のなかで育まれたものであった。
著者
永井 聖剛
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.44-55, 2012

<p>近代文学は、非合理的なものを作中から排除することで、現実らしさを構築しようとした。小稿で扱う〈変身〉が、排除されたものの好例である。しかし、〈変身〉はほんとうに姿を消してしまったのか。そうではあるまい。「変身したくない=真の自分のままでありたい」という内なる声となって、多くの主人公たちを規制し続けたのではなかったか。小稿は、写実主義から自然主義への推移の過程で、〈変身〉が排除されようとする現場を辿り直すことで、それによって囲い込まれた「現実」や「真実」がいかなる性格のものだったのかを考察しようとする試みである。</p>
著者
永井 聖剛 山田 陽平 仲嶺 真
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.294-300, 2019 (Released:2019-08-25)
参考文献数
28
被引用文献数
1 2

Previous studies have shown that the physical movements of participants influence creativity thinking. We examined whether another type of movements (bigger or smaller arm movements) modulates creative idea productions. In Experiment 1 participants were required to generate new names for rice after performing bigger or smaller arm movements. Bigger arm movements were associated with more divergent idea productions (e.g., non-typical ideas) compared to smaller arm movements. In Experiment 2, another task was used to generate as many ideas as possible for creative gifts the participants might give to an acquaintance, and the results showed the possibility that bigger arm movements led to more flexible idea generation than did smaller one. Taken together, the current study suggested the size of movements modulated creative thinking: bigger ones increased divergent creative thinking, possibly because bigger physical movements facilitate the divergent cognitive processing mode.
著者
平田 佐智子 山田 陽平 中川 岳 永井 聖剛
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.283, pp.65-68, 2013-11-02

本研究では、従来概念との対応が主に検討されてきた音象徴に対し、動作の強度や速さといった反応出力との対応を検証した。音声または文字を刺激、動作の強度や大きさを反応とした刺激反応適合性課題を行った結果、有声子音と強い/大きい動作、無声子音と弱い/小さい動作の間に適合性が見られた。これらの結果は音象徴と身体動作の接点を示唆する新しい知見といえる。
著者
永井 聖剛 山田 陽平
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心大会論文
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.27, 2013

創造性には,広範かつ新しい枠組みから物事を捉え新規かつ独創的なアイデアを産み出す「拡散的思考」,制約や状況に基づきアイデアを産出する「収束的思考」の2成分が存在する。創造性を促進する要因として&ldquo;気分状態&rdquo;は主要な研究対象であるが,本研究では,認知情報処理は身体の状態や動作に影響を受けるとする&ldquo;身体性認知(Embodied Cognition)&rdquo;の枠組みに基づき,「腕を大きく回す動きが(小さく回す動きよりも)広範で拡散的な思考を導き,拡散的思考が促進されるか否か」を検討した。「実在しないコメの名前」を考えるという創造性課題を課し,事前に「○○ヒカリ」という典型的回答を5例提示した。実験の結果,腕回し動作の大小は回答総数には影響を与えなかったが,大きく回す群では小さな群よりも典型例に縛られない非典型的なアイデアの回答比率が高く,拡散的思考が促進されることが明らかとなった。
著者
永井 聖剛
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
2006

制度:新 ; 文部省報告番号:甲2292号 ; 学位の種類:博士(学術) ; 授与年月日:2006/11/21 ; 早大学位記番号:新4345
著者
永井 聖剛
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.106, pp.34-49, 2022-05-15 (Released:2023-05-15)

文学テクストの作中人物は〈穴〉を潜ってあちら側に赴き、そうすることによって主人公となる。また同時にこのとき、三人称で語られていた物語言説は、おのずから一人称的──自由間接話法的な文体への変成を遂げる。どうしてこんなことが起こるのだろうか。本稿は、『浮雲』『蒲団』『羅生門』『屋根裏の散歩者』『雪国』などにあらわれた〈穴〉と、それに伴って現象した「話法の転換」とに着目しながら、日本近代文学における自由間接話法的な文体生成の歴史的意義もしくはその蓋然性について考察するものである。この試論を通じて、「作家」や「聖典」に拠らない文学史、すなわち間テクスト的な表現史・文体史記述の可能性についても問題提起をおこなってみたい。
著者
鈴木 悠介 永井 聖剛
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.409-415, 2020-09-01 (Released:2020-09-15)
参考文献数
32

Previous studies have shown perceptual processing cross-modal correspondences between spatial high/low positions and auditory high/low pitches. Several studies also found that auditory pitch influences spatially defined motor responses, suggesting that perceptual and motoric information regarding spatial and auditory high/low stimuli are shared. However, it remains unclear whether spatial position influences auditorily defined motor responses. We addressed this question by examining vocal responses to high/low pitches. In our experiment, sixteen participants vocalized a meaningless sound (/a/) at high/low pitch in response to spatially high/low stimuli under compatible and incompatible conditions. Results showed that the onset of vocalization was shorter under the compatible condition than the incompatible conditions. Together with previous studies, the current results suggest that information regarding spatial high/low position and auditory high/low pitch are bidirectionally and consistently shared across perceptual and motor systems.
著者
金谷 英俊 永井 聖剛
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.29-38, 2022-02-28 (Released:2022-03-25)
参考文献数
33

他者による課題遂行の観察が,実験参加者の変化検出課題成績と不安状態に及ぼす効果について検討した.交互に呈示される画像間で変化している部分を見つける変化検出課題を参加者に課し,検出までにかかった時間を測定した.実験1では参加者は,他者1名が参加者の斜め後ろに立ち,その課題遂行を観察する(他者観察あり条件),もしくは参加者のみ(他者観察なし条件)のいずれかの状態で課題を遂行した.その結果,他者に観察されていると観察なしの場合よりも,変化検出時間が有意に長くなった.続いて実験2で,人間の他者の代わりにビデオカメラを通して課題遂行の様子を観察した場合にも,カメラ観察なしの場合と比べて変化検出時間が長くなり,STAI状態不安尺度の得点が高くなった.以上の結果は,他者による観察によって参加者の不安が増大することにより,課題遂行時に視覚的注意が機能しにくくなる可能性を示唆するものである.