- 著者
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平田 雅博
- 出版者
- 社会経済史学会
- 雑誌
- 社會經濟史學 (ISSN:00380113)
- 巻号頁・発行日
- vol.80, no.4, pp.475-490, 2015-02-25
本稿では,まず,帝国と帝国主義の文化面を重視して,多大なる成果を生み続けた,マッケンジーを総編集者とする「マンチェスター大学帝国主義研究シリーズ」の出現の背景や強調点の移り変わり,今後の見通しなどの今日的な総括を試みた。ついで,これを踏まえた上で,歴史学にも影響をもたらした「ポストコロニアル」「新しい帝国史」「帝国論的転回」の動き,および,これらに対するキャナダインの「オーナメンタリズム」などによる実証史家としての批判の試みを見た。さらに,帝国研究の複雑性を示す「犠牲性の歴史学」の再検討から発生した「ブリテン帝国史への4ネーションアプローチ」を検討して,ケルト辺境のアイルランド,スコットランド,ウェールズとそれぞれの帝国との関係,とくにイングランドと帝国の関係の課題を提示した。最後には,残された非経済的要因としての思想やイデオロギーを「ブリテン帝国史のイデオロギー的起源」「独立宣言のグローバルヒストリー」といった著作で,思想史の重要性の認識を促したアーミテイジの思想史研究から検討した。