著者
横井 梓 齋藤 美穂
出版者
人間・環境学会
雑誌
人間・環境学会誌 (ISSN:1341500X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.11-20, 2014

本研究は、大型スクリーンによる立体視およびウォークスルーが可能なバーチャルリアリティ(VR)を使用して作成した提示刺激の心理的特徴を明らかにし、写真やCG刺激との心理評価の比較からVRの有用性を検証することを目的とした。本研究における提示内容は室内空間を設定し、実空間との比較を行った。調査は、SD法による各提示刺激と実空間の印象および気分、空間の特性に関する評価で構成され、調査結果より各提示刺激別の評価の特徴を抽出し、刺激間での比較を行った。その結果、写真は実空間とほぼ同等の印象、気分を与え、「現実感」、「質感」を表現しやすく、さらに実空間よりも暖かい印象を与える可能性がある刺激であることが示唆された。しかし、「奥行き」や「臨場感」を表現するには至らない結果が窺えた。CGは「明るさ」や「冷たい」印象を他刺激よりも与えやすく、実空間と同程度の印象、気分や現実感等を他刺激よりも与えづらい提示刺激であることが示された。一方で、VRは空間内で感じられる気分に関して実空間と同等の気分を与えることが困難であるという結果が得られたが、「上品さ」や「親しみやすさ」、「好感」を与え、「楽しさ」を他刺激よりも多く与える結果を得た。さらにVRは、「現実感」に加え、「臨場感」を表現しやすく、「広さ・高さ・奥行き」といった寸法感を表現することにも長けていることが示された。

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