- 著者
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福田 八寿絵
- 出版者
- 日本生命倫理学会
- 雑誌
- 生命倫理
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.1, pp.145-153, 2014
本稿は、高齢患者の医療行為の選択における判断基準、同意能力評価法を検討し、その利用可能性と課題を明らかにすることを目的とする。加齢とともに慢性疾患や障害によって認知機能や意思を表現する能力が低下し、治療などの医療行為に対する意思決定を行うことが困難となる場合も少なくない。そのためさまざまな同意能力の評価法が開発されてきているが、基準は一定ではない。既存の同意能力評価方法は有効性についての検討症例が比較的少なく、評価の閾値をどのように設定すべきか、評価の客観性や適用対象などについてもさらなる検討が必要となる。評価結果の適用を医療専門職の裁量に委ねる場合についても十分な説明責任を果たすことが求められる。医療専門職や家族が高齢者の価値観や選好を理解し、総合的な同意能力評価を行うことで、高齢者のエンパワーメントを促し、意思決定プロセスの透明性を高め、患者の意思をより的確に医療行為に反映させることが可能となる。