著者
鈴木 孝太
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.484-494, 2015-10

近年,胎児期および出生後早期の環境,特に栄養状態がその後の健康状態や疾病に影響するというDevelopmental Origins of Health and Disease (DOHaD)説が広く知られるようになり,胎児期や小児期の発育・発達が注目を集めている.特に,妊婦や子育て中の喫煙は,これらの発育・発達に影響を及ぼすことが示唆されており,国際的にも重要な公衆衛生学的問題の一つである.そのため,まず,日本人を対象とした科学的なエビデンスを蓄積していくことが重要である.そのような状況で,わが国における若い女性の喫煙率は,2000年前後をピークに低下に転じており,妊婦や母親の喫煙率についても同様の傾向が示唆されている.一方で,日本における若い女性,特に妊婦や子育て中の母親の喫煙が,母親本人や胎児,また出生児の健康に与える影響についての検討は,出生体重や一部の妊娠合併症,さらに出生児の発育やアレルギー疾患などについて行われているものの,対象となるアウトカムが限られていること,また,研究デザインや対象者,さらには検討を行っている地域にも限界があり,まだまだ十分とは言えない状況である.今後,厚生労働省が実施している21世紀出生児縦断調査や,環境省が実施しているエコチル調査など,全国データによる幅広いアウトカムの検討を進めていくとともに,各地域でも既存のデータを活用し,地域住民に還元できるエビデンスを蓄積してくことが重要であろう.

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