著者
仲村 秀子 尾島 俊之 中村 美詠子 鈴木 孝太 山縣 然太朗 橋本 修二
出版者
東海公衆衛生学会
雑誌
東海公衆衛生雑誌 (ISSN:2187736X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.71-75, 2013-07-20 (Released:2018-12-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

目的 2011年に発生した東日本大震災前後の岩手県・宮城県・福島県の出生率・男児出生割合・低出生体重児割合の変化を明らかにすることである。方法 2007年から2011年の人口動態統計を用いて,全国,岩手県,宮城県,福島県における各年の出生数・出生率,男児出生割合,低出生体重児数と割合の推移を,それぞれの変化率を用いて検討した。出生数・出生率は男女を合わせた総数を,低出生体重児数と割合は,総数と男女別の検討を行った。次に,2007年から2010年を合わせた出生率,男児出生割合,低出生体重児割合と2011年のものと比較し,χ2検定を行った(有意水準を5%)。結果 2007年から2011年にかけて全国,岩手県,宮城県,福島県の出生数と出生率は,概ね低下していた。2007年から2010年を合わせた出生率と2011年との比較では,全国,岩手県,宮城県,福島県いずれも2011年は有意に低下していた。男児出生割合は,2007年から2011年にかけて全国は緩やかに減少していた。岩手県は52.26%から50.44%に年々減少し,宮城県,福島県は50.78%から51.91%の間を増減しながら全体としては横ばいであった。2007年から2010年を合わせた男児出生割合と2011年との比較では全国と岩手県は有意に減少していた。低出生体重児割合は,2007年から2011年にかけて総数では,全国は安定していたが,岩手県・福島県は年によって増減しながら,ほぼ横ばいであった。宮城県は概ね上昇していた。男女別にみると,男児は2007年から2011年にかけて,全国は8.50%前後を推移したが,岩手県,宮城県,福島県は増減を繰り返し,ほぼ横ばいであった。福島県は他県と比較して増減の幅が大きかった。女児は全国では10.70%前後を推移したが,宮城県は概ね上昇していた。岩手県,福島県は増減を繰り返しながら横ばいであった。2007年~2010年を合わせた低出生体重児割合と2011年との比較では,宮城県の女児は10.02%から11.04%へと有意に増加し,福島県の男児は8.25%から7.56%へと有意に減少していた。結論 東日本大震災が起こった2011年の全国・岩手県・宮城県・福島県の出生率は2007年から2010年と比較して有意に低下し,男児出生割合は全国と岩手県で有意に減少していた。低出生体重児割合は,宮城県の女児で有意に増加し,福島県の男児で有意に減少していた。今後,より詳細な分析が必要である。
著者
鈴木 孝太
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.484-494, 2015-10

近年,胎児期および出生後早期の環境,特に栄養状態がその後の健康状態や疾病に影響するというDevelopmental Origins of Health and Disease (DOHaD)説が広く知られるようになり,胎児期や小児期の発育・発達が注目を集めている.特に,妊婦や子育て中の喫煙は,これらの発育・発達に影響を及ぼすことが示唆されており,国際的にも重要な公衆衛生学的問題の一つである.そのため,まず,日本人を対象とした科学的なエビデンスを蓄積していくことが重要である.そのような状況で,わが国における若い女性の喫煙率は,2000年前後をピークに低下に転じており,妊婦や母親の喫煙率についても同様の傾向が示唆されている.一方で,日本における若い女性,特に妊婦や子育て中の母親の喫煙が,母親本人や胎児,また出生児の健康に与える影響についての検討は,出生体重や一部の妊娠合併症,さらに出生児の発育やアレルギー疾患などについて行われているものの,対象となるアウトカムが限られていること,また,研究デザインや対象者,さらには検討を行っている地域にも限界があり,まだまだ十分とは言えない状況である.今後,厚生労働省が実施している21世紀出生児縦断調査や,環境省が実施しているエコチル調査など,全国データによる幅広いアウトカムの検討を進めていくとともに,各地域でも既存のデータを活用し,地域住民に還元できるエビデンスを蓄積してくことが重要であろう.
著者
山北 満哉 安藤 大輔 佐藤 美理 秋山 有佳 鈴木 孝太 山縣 然太朗
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
pp.2204, (Released:2023-03-31)

目的:山梨県甲州市において実施した骨強度調査の取組について,PAIREM(Plan: 計画, Adaptation: 採用, Implementation: 実施, Reach: 到達, Effectiveness: 効果, Maintenance: 維持)の枠組み(6局面)に基づいて報告することを目的とした。 方法:市内の小中学校において実施した2011~2020年の取組を対象とし,PAIREMモデルの6局面について評価した。 結果:計画:骨強度調査は別調査の追加調査として計画され,市内の希望校を対象として実施されたが,骨強度調査の具体的な到達目標は設定していなかった。採用:10年間で中学校による協力の申し出(採用)がなくなったものの,小学校では61.5%から84.6%に増加した。実施:骨強度調査の結果を活用した健康教育が展開されるとともに,学校保健委員会(5校,計7回/10年)及び骨の研究部会(5回/10年)において骨強度に関する情報提供が行われた。到達:対象とした7,362人のうち,7,200人(97.8%)の高い到達度で骨強度を測定できた。全対象児童(100%)に対して、骨強度に関する情報提供が行われた。効果:具体的な到達目標が設定されていなかったため,骨強度に対する骨強度調査の効果(目標達成度)を評価することができなかった。継続:参加校における10年間の平均継続年数は8.36(標準偏差2.2)年であったが,個人に対する取組の長期的な継続効果については検討できなかった。 結論:学校における骨強度調査の取組により高い到達度で健康教育を実施できる可能性が示された。今後は健康教育の詳細を把握するとともに,骨強度に関する具体的な数値目標を設定し,その達成を目指した取組を実施することが課題である。
著者
古城 隆雄 尾島 俊之 中俣 和幸 家保 英隆 田中 剛 牧野 伸子 鈴木 孝太 平山 朋 山本 光昭 鶴田 憲一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.385-392, 2021-06-15 (Released:2021-06-25)

目的 公衆衛生の進歩発展および向上のためには,科学的な根拠に基づく政策の展開が求められ,学術と行政の連携が重要である。そこで,日本公衆衛生学会を活用しながら,学術と行政のさらなる連携の推進方策を検討することを目的に,日本公衆衛生学会学術行政連携検討委員会(委員長:鶴田憲一)の活動を行った。方法 学術行政連携検討委員会を2018年度~2019年度の2年間に3回開催し,さらにメールによる意見交換を行った。また,2019年10月24日に第78回日本公衆衛生学会総会において「根拠に基づく公衆衛生政策(EBPM)の具体的事例とノウハウ(学術行政連携検討委員会)」と題したシンポジウムを開催し,学術と行政の両者から,これまでの連携の具体的事例とノウハウについて発表し,参加者との質疑を通じて今後の課題についても議論した。活動報告 学術行政連携検討委員会の検討では,日本公衆衛生学会の運営における連携,行政業務データの精度に関する共通認識,行政におけるデータ活用の推進,人材確保と育成による連携の重要性があげられた。シンポジウムでは,委員長から学術行政連携検討委員会の設立経緯と趣旨を説明した後,データの活用に関する行政と学術のギャップについて,目的,研究の位置づけ,データ形式,人材,データ提供への課題の5点について整理した。続いて,行政の観点から,都道府県行政と公衆衛生学会の連携,地方行政職員の演題発表の変化,災害対応における学術への期待について,学術から,大学による行政の調査研究の支援,行政と連携したエビデンスづくりについての報告と質疑が行われた。結論 学術と行政の連携により,行政にとっては,根拠に基づく政策形成の深化とそのための人材育成が推進できる。また,日本公衆衛生学会総会開催は,公衆衛生従事者の資質の向上と経済効果につながる。学術にとっては,求められる研究内容の把握やデータ活用が推進できる。
著者
真田 知世 田口 晶彦 川瀬 善一郎 小平 紀久 久野 芳之 田中 貴 山中 菜詩 梅村 朋弘 鈴木 孝太
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.603-608, 2020-09-15 (Released:2020-10-10)
参考文献数
10

目的 気象環境の変化によって引き起こされる気象病において,気象環境の変化を把握し,事前の予防行動からリスクを軽減することが重要である。そこで,気象データとレセプトデータを組み合わせて分析を行う「Health Weather」の取り組みを立ち上げ,10歳未満の小児ぜん息を対象として,気象と疾患の関係性について検討した。方法 10歳未満の小児ぜん息の外来患者数を対象とし,全国を7つのエリアに分けて,気象データ(気温,湿度,気圧,風)を説明変数とするポアソン回帰分析を行った。さらに,ポアソン回帰モデルを用いて,気象の変化から予測される10歳未満の小児ぜん息の外来患者数の変化を表す予測モデルを作成した。結果 気象データから予測される10歳未満の小児ぜん息患者数と実際の患者数を比較してみると,各エリアにおいて,作成した予測モデルが実測の患者数をほぼ再現できていることが確認された(0.77≦R2≦0.96)。結論 気象データとレセプトデータを組み合わせた分析から,気象と10歳未満の小児ぜん息患者数の関係性を把握できることが確認された。また,Health Weatherの取り組みが,気象病における気象と疾患の関係性の把握につながる可能性が示唆された。
著者
佐藤 美理 山縣 然太朗 鈴木 孝太
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、小児における抑うつ症状の罹患率が上がっている。我々は、コミュニティベースのコホート研究により、思春期における抑うつ症状と他のメンタルヘルスに関する要因の検討を行った。起立性調節障害は思春期特有の症状である。我々は、女子において、抑うつ症状とこの起立性調節障害に因果関係があることを明らかにした。また、歪んだボディイメージは抑うつ症状と関連があることが示唆されており、検討した結果、思春期の早い段階で体型に関する不満足があることが後の抑うつ症状の増加に関連していた。
著者
鈴木 孝太 山縣 然太朗 田中 太一郎 安藤 大輔
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

近年、妊娠中の喫煙が、出生した子どもの肥満と関連していることが示唆され、さらに、この関連には性差があることも推測されていたが、実際に検討されたことはほとんどなかった。本研究では、日本の一地域において、約20年にわたって妊娠中から子どもの発育を追跡してきたデータを用いて解析を行った結果、妊娠中の喫煙が小学生の肥満と関連していることを明らかにした。さらに、これらの関連には性差が存在することを示した。