著者
井上 泰至
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.57-66, 2010-10-10

ペリー来航前後から安政の大獄あたりまでの、武家説話や、志士の言説における秀吉の朝鮮攻略について検討した。文化・文政期には昌平坂学問所の古賀[トウ]庵が、はやく秀吉のこの戦争の非倫理性を認めつつ、諸外国に示した「武威」の点で評価していたが、幕末になると秀吉の雄大な志を評価する方に傾き、そうした認識は、儒学・国学・洋学・水戸学の垣根を越え、漢文武家説話から絵本読本にまで確認できた。さらに、水戸学の影響を受けた吉田松陰により、秀吉の戦争の「正当性」は、天皇存在の聖性から理念化され、より具体的に大陸進出の膨張策が主張された点で、近代のこの戦争の評価と実際のアジア侵攻にリンクするものであったことを確認した。

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井上泰至「文禄・慶長の役を記憶する-「復古」/「維新」の前提としての武家説話-」(『日本文学』59-10、2010年)は、同氏の著書『秀吉の対外戦争』(笠間書院、2015年)第9章の元論文。幕末期に洋学者や幕府の外交担当者を含めて、秀吉を英雄視する見方が出ることを分析。 https://t.co/3P33xpTJpg

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