- 著者
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許 明子
- 出版者
- 筑波大学留学生センター
- 雑誌
- 筑波大学留学生センタ-日本語教育論集 (ISSN:13481363)
- 巻号頁・発行日
- no.17, pp.33-45, 2002
韓国国内の日本語教育の現場で教材として用いられている日本語教科書や文法書の中で受身文がどのように教えられているかについて分析した結果,韓国人学習者が日本語の受身文の学習において起こりやすい問題点が明らかになった。韓国国内で用いられている日本語教科書の中には「(ら)れる」が受身,自発,可能,尊敬の意味を持つことを強調して述べている教科書が多かったため,韓国人学習者が日本語の受身文の意味を理解することは容易なことではないと思われる。また,韓国語の漢語動詞の受身文は「[?]」受身文を中心に非常に多く使われており,韓国人学習者において特に誤用が多く見られているが,漢語動詞に関する説明はほとんど触れられていなかった。さらに,韓国で出版されたほとんどの日本語教科書において日本語の受身文は日本の日常生活において頻繁に使われているという記述がなされており,このような学習を行った韓国人学習者は日本語の受身文を過剰使用する可能性がある。韓国語の中で受け身分がどのように用いられており,それは日本語でどのように表現できるかについてさらに詳しい対照研究を行い,韓国語との対照を通して語用的な特徴を理解させる必要がある。This article examines the characteristics of the descriptions of passives in Japanese laguage textbook used in Japanese language eduction in Korea. The findings indicate that Korean learners face a number of problems with Japanese passives. Explanations emphasize that Japanese passives are more complex than Korean passives in three respects ; a) " (ra) reru" has four meanings, passive, spontaneous, potential and honorific, making it difficult for Korean learners to understand the meaning of passive sentences, b) although Korean uses many passive Sino-verbs with " doeda" , and Korean learners make many errors with passive Sino-verbs in Japanese, there is little explanation of passive Sino-verbs, c) passive sentences are used more in Japanese than in Korean, causing possible overuse of passive with Korean learners.