著者
藤江 昌嗣 FUJIE Masatsugu
出版者
岩手大学人文社会科学部
雑誌
思想と文化
巻号頁・発行日
pp.597-609, 1986-02-05

確率に関する歴史的研究は,Ⅰ.Todohunter の大著"A History of the Mathenmatical Theory of Probability"[1865](『確率論史パスカルからラプラスの時代までの数学史の一断面』安藤洋美訳1975)をはじめとして多くの蓄積があるが,それらの対象の扱い方は, Todohunter の著名(副題)に見られるように,確率に関する諸法則・諸定理が各人によってどの程度まで完成されたものになっているかという観点が柱になっていると思われる1)。確率 Probability という概念がどのように形成されてきたかをその前提条件と共に問い直すという作業は著者の知る限りではあるがほとんど存在していないといえる。こうした問い直しは,頻度説・信頼度説として一般に知られているD.Huffによる統計的確率と帰納的確率の関係,更に確率的思考の認識あるいは科学にとっての意味を考えることにとり決して無意味なものとはならないであろう2)。本稿は,こうした問い直し作業の一つとしてなされた I.Hacking の『確率の出現一確率,帰納そして統計的推測についての初期の概念の哲学的研究』(以下Emergence と略す)をとりあげ,その内容の紹介と若干の問題・課題の提示を目的とする3)。

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