著者
三根 慎二
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.61, pp.25-58, 2009

原著論文【目的】 本稿の目的は、プレプリントサーバarXivの学術情報メディアとしての役割および位置づけを、2007年までに登録された論文・記事すべてに基づいて実証的に明らかにすることである。 【方法】 1) 論文・記事の年間および総登録件数 2) 論文・記事の学術雑誌掲載率とその後の掲載先 3) arXiv への登録年と学術雑誌掲載年の差(即時性) を明らかにするために、1991年から2007年にわたってarXiv に登録された論文・記事449,071件すべてを対象に、各論文・記事に付与された1) ID, 2) journal-ref (登録論文・記事のその後の掲載先 、 3) 主題領域のデータを分析した。【結果】 方法で述べた3点について、以下のことがわかった。 1) 17年間にわたってarXiv全体では登録件数が毎年増加傾向にあり、とくに宇宙物理学、物性物理学、数学で顕著であるが、主題領域により差がある。 2) arXivに登録された論文・記事のその後の学術雑誌掲載率は全体で47.1%であり、少なくとも論文・記事の半数弱だけが学術雑誌等に掲載されていること、領域では物理学の理論系の領域で高いが数学や計算機科学では低いこと、学術雑誌に掲載された登録論文・記事全体の半数近くを"Physical Review"各誌や"Astronomical Journal"など、物理学と天文学のコアジャーナルに掲載された論文が占めていることがわかった。 3) 高エネルギー物理学4領域では多くの論文が雑誌掲載年以前に登録されているが、登録時点で既に掲載済みである学術論文一般へのアクセス提供を目的としたものも一部の主題領域で見られるようになっている。 以上から、現在arXivは学術雑誌論文のプレプリントサーバと学術論文一般の電子アーカイブという二つの機能を同時に果たしていると考えられる。

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