砂層とその下部に礫層を重ねた単純な構造の土層地盤では、互いの層の土粒子の大きさあるいは間隙サイズに伴う保水性の違いにより、砂層と礫層の境界面の上部で降下浸潤水が保水され、集積する。境界面に傾斜をつけると、集積水は傾斜方向に流下していくため、境界面はあたかも不透水性の障壁として機能し、それ以深の領域への水の浸入が抑制される。また、境界面に沿って流下した水は、末端で集水することにより、貴重な雨水資源として捕獲することも可能である。砂層と礫層を重ねた単純な土層地盤にみられる浸潤水の遮断・捕獲の機能を、土の毛管障壁あるいは土のキャピラリー・バリア(Capillary barrier of soil)と呼ぶ。傾斜したキャピラリー・バリアのもつ浸透抑制機能を利用すれば、地盤に浸透した降雨水を表層部で効果的に捕捉し、地盤深部への浸潤を低減できるため、地山斜面やため池堤防斜面などの斜面すべり防止技術への展開が可能となる。一方、キャピラリー・バリアを地表面の近傍で平面上に敷設すれば、土壌水を根群域に保水できるため、節水かんがいが可能となる。このような土のキャピラリー・バリアがもつ応用展開の可能性に着目し、まず、土のキャピラリー・バリアの技術的特徴を紹介したのち、野外実験および圃場実験にもとづき、傾斜したキャピラリー・バリア地盤における雨水遮断機能ならびに水平状に敷設したキャピラリー・バリア地盤における節水かんがいの可能性を調べる。