著者
丹野 久
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.16-25, 2010-01

1991〜2006年の16年間に北海道の15地域で、年次平均で42〜645地点の水稲品種「きらら397」の精米の蛋白質含有率とアミロース含有率を調査し、各地域の2〜3市町村での生育調査結果をまじえ、年次間と地域間の差異およびその発生要因を検討した。年次間と地域間には、それぞれ出穂期で7月29日〜8月16日、7月29日〜8月9日、不稔歩合で5.0〜61.0、8.9〜21.5%、千粒重で21.1〜23.5、22.0〜23.3g、玄米収量で205〜576、398〜593kg/10a、蛋白質含有率で7.2〜8.6、7.2〜8.2%、アミロース含有率で18.3〜22.2、19.8〜21.2%の差異が認められた。全形質とも年次間差異は地域間差異より大きく、変動係数の比で1.4〜3.2倍であった。年次間では、出穂期が早く、障害型冷害危険期の平均気温が高く、不稔歩合が低いこと、千粒重が大きく多収であることなどにより、蛋白質含有率が低下した。また、出穂後40日間の日平均積算気温が、年次間、年次と地域込みで843〜849℃において蛋白質含有率が最も低かった。しかし、地域間ではそれら生育特性と一定の関係は認められず、泥炭土の比率が低いこと、また分げつ期に当たる6月の平均風速が小さいことなどにより蛋白質含有率が低下した。一方、アミロース含有率は、年次間、地域間とも出穂後40日間の日平均積算気温が高いこと、とくに年次間では出穂期前の平均気温が高く出穂期が早いことにより低下した。本研究の結果、北海道における良食味米生産のための栽培指針の策定に有効な知見が得られた。

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