- 著者
-
一瀬 貴子
- 出版者
- 関西福祉大学社会福祉学部研究会
- 雑誌
- 関西福祉大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:1883566X)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.2, pp.19-28, 2013-03
本稿における第一の目的は,地域包括支援センターに配置された社会福祉士の「高齢者虐待対応専門職としての専門職性自己評価」指標の構成要素を検討すること,第二の目的は,その専門職性がどの程度社会福祉士の職務の特徴を表していると認知しているのか(アイデアルイメージ)と,それらを実際に虐待発生事例の支援過程でどの程度意識して仕事にあたっているか(実践的意識)の差異を明らかにすることである.調査方法は,倫理的配慮を行った上で全国の地域包括支援センター1520 箇所に配属されている社会福祉士1520 名を対象とし,自記式質問紙を作成し,郵送調査を行った.有効回答は531 名であった.因子分析の結果,『1,被虐待高齢者や養護者や家族とのインテーク・アセスメント面接に関する技術因子(9項目)』,『2,高齢者虐待発生事例を支援する際の価値因子(8項目)』,『3. 高齢者虐待の発生時・通報時における対応方法に関する知識因子(7項目)』,『4,高齢者虐待対応専門職としてのオートノミー因子(3項目)』,『5,高齢者虐待発生事例に対する情報整理に関する技術因子(3項目)』,『6,高齢者虐待対応に関する技術向上のための自己研鑽因子(2項目)』が抽出された.また,アイデアルイメージと実践的意識との平均値についてt 検定で比較したところ,「高齢者虐待発生事例に対する情報整理に関する技術」を習得することや「スーパービジョンやコンサルテーションの機会を持つ」ことに関しては,アイデアルイメージと実践的意識との平均値の差異が大きいことが分かった.高齢者虐待対応現任者標準研修を受けることにより,「虐待対応ソーシャルワークモデル」に関する知識や技術を習得することが今後必要であると考える.