- 著者
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石井 穣
- 出版者
- 関東学院大学経済研究所
- 雑誌
- 経済系 : 関東学院大学経済学会研究論集 (ISSN:02870924)
- 巻号頁・発行日
- vol.254, pp.120-135, 2013-01
これまでリカードウは資本蓄積を促進する立場から,生産的労働の増加を促進し,不生産的労働の雇用を含む,不生産的支出をできるだけ抑制すべきとの立場であったと考えられてきた。だがリカードウは「原理」第3版第31章の機械論において,召使いなどの不生産的労働者の雇用をひとつの足がかりとして,資本蓄積にともなう労働需要の増加を導出し,さらに機械導入は労働者階級を含む全般的富裕をもたらすことを論じている。このように,リカードウ資本蓄積論における不生産的労働の位置づけは,必ずしも明確ではないことから,本稿では,リカードウにおける労働需要の規定要因の考察を通じて,不生産的労働の位置づけを検討する。リカードウにおいては総生産物による労働需要規定が重要性を持とことを示すとともに,その分配論,利潤率低下傾向のさらなる考察のために,不生産的労働が及ぼす影響の解明が求められることに言及する。