著者
山口 武志
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要. 教育科学編 = Bulletin of the Faculty of Education, Kagoshima University. Studies in education (ISSN:09136606)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.11-27, 2012

近年の数学教育における認識論的研究では,構成主義や相互作用主義,社会文化主義の協応(coordination)が議論されており,各種の認識論における社会的相互作用の機能のとらえ方が論点の1つになっている。こうした研究動向をふまえ,本研究は,文献解釈的方法によって,Vygotsky 論を中心とする社会文化主義的アプローチにおける社会的相互作用の位置づけに関する考察を目的とするものである。本稿では,Vygotsky 論の鍵概念として,(V1)高次精神機能の発生と発達に関する基本的な視座としての「文化- 歴史的発達論」,(V2)高次精神機能の記号による被媒介性:媒介された(mediated)行為,(V3)高次精神機能の社会的起源:間精神的機能の内精神的機能への転化,内化(internalization)と専有(appropriation),(V4)発達の最近接領域の4つを指摘した。その上で,社会文化主義的アプローチにおける社会的相互作用の重要な機能や特性として,次の3つを指摘した。(SC1)「間精神機能の内精神機能への転化」を基盤とする「文化- 歴史的発達」にとって,社会的相互作用は必要不可欠であり,認知発達の質に影響を与える。(SC2)社会的相互作用は,「発達の最近接領域」の創出において重要な役割を果たす。(SC3)心理的道具に媒介された社会的相互作用を通じて,子どもは高次精神機能を発達させる。

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