著者
山口 武志
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要. 教育科学編 = Bulletin of the Faculty of Education, Kagoshima University. Studies in education (ISSN:09136606)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.11-27, 2012

近年の数学教育における認識論的研究では,構成主義や相互作用主義,社会文化主義の協応(coordination)が議論されており,各種の認識論における社会的相互作用の機能のとらえ方が論点の1つになっている。こうした研究動向をふまえ,本研究は,文献解釈的方法によって,Vygotsky 論を中心とする社会文化主義的アプローチにおける社会的相互作用の位置づけに関する考察を目的とするものである。本稿では,Vygotsky 論の鍵概念として,(V1)高次精神機能の発生と発達に関する基本的な視座としての「文化- 歴史的発達論」,(V2)高次精神機能の記号による被媒介性:媒介された(mediated)行為,(V3)高次精神機能の社会的起源:間精神的機能の内精神的機能への転化,内化(internalization)と専有(appropriation),(V4)発達の最近接領域の4つを指摘した。その上で,社会文化主義的アプローチにおける社会的相互作用の重要な機能や特性として,次の3つを指摘した。(SC1)「間精神機能の内精神機能への転化」を基盤とする「文化- 歴史的発達」にとって,社会的相互作用は必要不可欠であり,認知発達の質に影響を与える。(SC2)社会的相互作用は,「発達の最近接領域」の創出において重要な役割を果たす。(SC3)心理的道具に媒介された社会的相互作用を通じて,子どもは高次精神機能を発達させる。
著者
桶田 洋明
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要. 教育科学編 = Bulletin of the Faculty of Education, Kagoshima University. Studies in education (ISSN:09136606)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.33-45, 2018-03-29

現代の絵画表現において用いられる絵具は多岐に渡っているが、美術専修学生であってもそれらの正確な理解度は高くない。絵具の違いは展色剤の差から成るため、まずは絵具における展色剤について油絵具・アクリル絵具・テンペラ絵具の3種を中心に、試作を踏まえて検証し、各絵具の特徴および技法について考察した。 その結果、油絵具では展色剤である乾性油と希釈剤である揮発性油の違いを理解することで、的確な油の選定が可能となった。アクリル絵具はアクリルガッシュとの相違点や展色剤であるアクリル合成樹脂の理解を深めるとともに、添加剤の種類やその特徴について確認した。テンペラ絵具は全卵と油との混合による展色剤の作成方法や、半水性である成分の特徴を生かした技法の把握、油絵具との互層による混合技法の特徴について確認できた。 これらの実制作により、個々の絵画表現意図に応じた絵具・技法の選定が可能となり、表現レベルの向上に繋げることができた。また各絵具の知識を習得することで、他者への指導の際の一助となり、さらには将来において美術教員・専門家として就いた際に、正確で的確な指導の実現が期待できる。