著者
八代 充史
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.27-40, 2012-12

論文本研究は, 東京市場で競争している異なる資本国籍の人的資源管理を「収斂と差異化」という観点から検討する。 人的資源管理に変化を促す要因として重要であるのが, 国際化, 具体的には外資系企業との競争である。一般に長期雇用の日本企業では, 年功賃金や遅い昇進によって, 従業員の格差が長期的に拡大していく。こうした日本企業の人的資源管理は, 短期的な処遇格差を重視する海外で人材獲得競争に「失敗」し続けてきたが, 近年国内の外資系企業との人材獲得競争においても, 同様の問題が生じている。本稿では日本企業と外資系企業との人材獲得競争が各々の雇用制度にどの様な影響を及ぼすかを, 投資銀行を対象に考察する。 投資銀行の業務は, 大別して個人営業部門と法人部門とに分けられる。海外の基準では, 両者の報酬体系は大きく異なるにもかかわらず, 伝統的に日系の投資銀行では職能資格制度によって処遇は基本的に同一であった。この点について現在どの様な変化が見られるかを, ①職種別採用の有無, ②両部門間の人事異動, ③報酬体系という3つの側面から検討する。 また投資銀行における総費用の中で人件費の占める割合は極めて高く, 人件費の削減をどの様にして行うかが市場競争において決定的に重要である。この点については, ①法人部門と個人部門の分離, ②外部労働力の導入および雇用調整, ③職種別賃金制度の導入, ④ボーナス比率の調整等, という4つの側面に関して, 各社の対応を明らかにしたい。

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