著者
八代 充史 早見 均 佐野 陽子 内藤 恵 守島 基博 清家 篤 石田 英夫 樋口 美雄 金子 晃 八代 充史 早見 均 宮本 安美
出版者
慶応義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

これまで労働市場では、労働者の保護を目的にして様々な規制がなされてきた。こうした規制は、労働市場における労働者の交渉力を高め、彼らの基本的人権を守るという重要な役割を果たしてきた。しかし、労働市場における需給バランスの変化や、労働者の所得水準の向上によって、こうした規制の中で時代にそぐわなくなったものが多々見られることも事実である。従って戦後労働法制の基本枠組みが構築されて50年を経た今日、労働市場の規制緩和について議論することは重要であると言えるだろう。しかし労働市場の規制緩和は、民営職業紹介や人材派遣業など職業安定行政に係わるもの、裁量労働制や雇用契約期間の弾力化、女性保護規定の緩和など労働基準行政に係わるもの、さらには企業内労働市場の人事管理や労使関係に係わるものまで多岐に渡っている。この研究では、こうした幅広い問題領域の中で主に労働基準法関係に焦点を絞って検討を行った。ただし報告書の第2章では、労働市場の規制緩和に関する問題領域全体を鳥瞰している。我々は、労働市場の規制緩和について各界の有識者を講師に招いてヒアリングを実施し、文献の収集・検討を行った。それに基づいて企業に対する郵送質問紙調査や企業の訪問調査を実施した。郵送質問紙調査では、労働基準法の規制緩和が企業のビジネスチャンスや雇用機会とどの様に関連するかという点を明らかにすることに努めた。
著者
八代 充史
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.27-40, 2012-12

論文本研究は, 東京市場で競争している異なる資本国籍の人的資源管理を「収斂と差異化」という観点から検討する。 人的資源管理に変化を促す要因として重要であるのが, 国際化, 具体的には外資系企業との競争である。一般に長期雇用の日本企業では, 年功賃金や遅い昇進によって, 従業員の格差が長期的に拡大していく。こうした日本企業の人的資源管理は, 短期的な処遇格差を重視する海外で人材獲得競争に「失敗」し続けてきたが, 近年国内の外資系企業との人材獲得競争においても, 同様の問題が生じている。本稿では日本企業と外資系企業との人材獲得競争が各々の雇用制度にどの様な影響を及ぼすかを, 投資銀行を対象に考察する。 投資銀行の業務は, 大別して個人営業部門と法人部門とに分けられる。海外の基準では, 両者の報酬体系は大きく異なるにもかかわらず, 伝統的に日系の投資銀行では職能資格制度によって処遇は基本的に同一であった。この点について現在どの様な変化が見られるかを, ①職種別採用の有無, ②両部門間の人事異動, ③報酬体系という3つの側面から検討する。 また投資銀行における総費用の中で人件費の占める割合は極めて高く, 人件費の削減をどの様にして行うかが市場競争において決定的に重要である。この点については, ①法人部門と個人部門の分離, ②外部労働力の導入および雇用調整, ③職種別賃金制度の導入, ④ボーナス比率の調整等, という4つの側面に関して, 各社の対応を明らかにしたい。