著者
宮嶋 俊一 Miyajima Shunichi
出版者
神奈川大学経営学部
雑誌
神奈川大学国際経営論集 = Kanagawa University international management review (ISSN:09157611)
巻号頁・発行日
no.46, pp.69-80, 2013-10

「水俣」病という名称は一方で水俣という土地に疾患のイメージを付与する「レッテル」となっているが、他方でその地で起こった出来事の本質を捉える役割を果たしてもいる。「水俣」病とは、水俣で病気が発生したというだけでなく、水俣の自然環境すべてが「罹患」したことを表している。そして、水俣病は食という営みを通じて人間が自然環境の一部となっていることを明確に示した。ゆえに、自然環境保護とは人間を守ることであり、また人間を守ることが自然環境保護にも通じることが明らかとなる。ここで言われる自然環境とは、主体としての人間が利用すべき客体としての自然ではない。「水俣病事件」を見つめ直すことによってそのことが見えてくる。そして、それは福島第一原子力発電所爆発事故後の放射能汚染問題について考えていくためのヒントを与えてくれる。放射能汚染問題について、水俣病事件のように健康被害をはっきりと示すことは難しいが、そこで懸念されていることは、人間がその一部であるところの自然環境汚染・破壊とそれによって影響を受ける人間のいのちなのである。研究論文

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