著者
須田 朗
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
no.77, pp.165-198, 2013-10-10

本稿は哲学的良心概念を手がかりにカントとハイデガーの思想を比較するものである。カントは良心を道徳法則から発せられる「内的裁判官の声」と呼ぶ。良心の声は、現象的存在者としては自然必然性に支配される人間に、自らが理性をもつ自由な叡知的存在者であることを告げるという。本稿は人間のこの両面を時間概念に即して解釈する。良心現象は現象を支配する「自然的時間」とは別の「倫理的時間」のごときものを示している。これが本稿のカント解釈の真骨頂である。他方ハイデガーは『存在と時間』で良心論を展開する。良心は、世間に頽落した現存在に対して本来的自己が発する呼び声である。おのれが負い目ある存在であることを自覚するように促す呼びかけなのである。これに応えることが覚悟性であるが、それは同時に本来的な時間性を自覚的に生きることでもある。それはもはやおのれの手中にない、いやそもそもおのれの手中にない非の根拠を引き受けることを意味する。一方カントが良心に見たものも、過去を現在の瞬間として引き受ける責任であった。このようにカントとハイデガーはまったく違う文脈ではあるが、同じように良心現象に人間存在の本来性を見ていたという共通点をもつ

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[Heidegger][Kant][良心][ルーマン解読] 既読感がある。/須田 朗(2013)「カントとハイデガー:良心をめぐって」人文研紀要 77, 165-198, 中央大学

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