著者
並松 信久
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.239-278, 2014-03

仲原善忠(1890–1964)は,沖縄を代表する歴史および地理の研究者である。とくにオモロ研究者として著名である。沖縄県久米島生まれで,戦前期には主に地理の教育者として活躍する。沖縄研究には1939(昭和14)年頃から取り組んでいるが,久米島のオモロ研究が,そのきっかけとなる。そして『久米島史話』(弟の仲原善秀との共著,1940 年)など一連の歴史研究を発表している。仲原の歴史研究には,久米島の原体験から生まれる独自の歴史観と文化論が内包されている。仲原は沖縄がヤマトによって逆境におかれていたということだけではなく,沖縄の支配層の下に,さらに抑圧されていた離島の久米島の姿を描いている。 仲原の沖縄史研究は,次の四つの特徴がある。(1)按司と支配体制,(2)琉球王国の祭政一致体制,(3)久米島の経済的基盤,(4)久米島の地方役人と官僚システム,これらの特徴は久米島独特の思想を反映していた。そして久米島オモロの研究は,上記の(1)~(4)を裏付ける役割を果たしていた。 さらに戦後沖縄の状況を念頭に置いて,次の四つに仲原の歴史研究の特徴がある。(1) 沖縄の時代区分,(2)琉球と薩摩藩の関係,(3)ペリー来航と戦後の米軍占領,(4)ブラジル「勝ち組」への対応,であった。これらの戦後の沖縄史研究は,近代主義的な様相を帯びていたものの,その基本にあるのは郷土・久米島から生まれた歴史観であった。

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CiNii 論文 -  仲原善忠と沖縄史研究 : 郷土から生まれる歴史観 https://t.co/quRNbygTX2 #CiNii

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