著者
湯本 貴和
出版者
京都大学ヒマラヤ研究会・人間文化研究機構 総合地球環境学研究所「高所プロジェクト」
雑誌
ヒマラヤ学誌 : Himalayan Study Monographs (ISSN:09148620)
巻号頁・発行日
no.12, pp.158-162, 2011-05-01

ブータンでは輪廻転生という考え方に基づいて, 人々は殺生を極端に避ける傾向があるとされている. 亡くなった家族や知人が転生して, ハエや蚊などを含む, 身の回りの動物となっているかもしれないからだ. しかし, 中世日本では畜生道に落ちている衆生を殺生することによって, 畜生という境遇から救済するという考え方があった. この正反対の態度ではあるが, ブータンと中世日本に共通するのは, 輪廻転生に対する厳然たる「因果対応性」であり, 人がこの世で善悪の行為を行うと, それに対する過福の報いを必ず受けるという原理である. 現代日本人には, この世の善悪の行為が後生に関わるという切実さが想像しがたいが, ブータンや中世日本に生きる人々には, 現代日本社会において法の裁きによって犯罪の刑罰を受けるという必然性となんら遜色のないリアリティーで, 現世を超えた業が迫るのだろう.

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