- 著者
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井上 和人
- 出版者
- 関東学院大学[文学部]人文学会
- 雑誌
- 関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
- 巻号頁・発行日
- vol.129, pp.177-194, 2014-01
『風流今平家』(元禄十六年三月刊)は、西沢一風の浮世草子で唯一副題簽をもつ。副題簽は当該巻の大意を内容とし、書式は「此巻は……のせたり(しるせり・うつせり)」で統一されている。この『風流今平家』の副題簽は、どこから着想を得たものであろうか。一風以前の浮世草子で副題簽をもつ作品といえば、西鶴『好色一代女』(貞享三年六月刊)が周知のところ。だが、『風流今平家』の副題簽と『好色一代女』のそれとは、明らかに書式が異なり、『好色一代女』にならったものとはいいがたい。本論文では、『風流今平家』の副題簽は、枕本型軍記の目録形式、とりわけ目録に備わる大意を模していると考えた。そこで、まず枕本型軍記の流行と特色について整理し、ついで浮世草子に及ぼした影響について述べる。