- 著者
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伊藤 太一
- 出版者
- 京都大学農学部附属演習林
- 雑誌
- 京都大学農学部演習林報告 (ISSN:0368511X)
- 巻号頁・発行日
- no.65, pp.p310-324, 1993-12
- 被引用文献数
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1892年に設置されたニューヨーク州立アディロンダック公園は今日においても6割近く私有地を含む地域制の公園である。約4割を占める州有地は1895年に州憲法で自然状態を保つことが規定された保護林であるが, それ以来その利用をめぐって改憲論議が展開されてきた。その過程を探ることによって, 水源涵養を中心とする功利主義的な保全からレクリエーション空間としての保全へ, さらに生態系のプロセス保全にいたる, 保護林のあり方を巡る人々の考え方の展開が明らかになった。一方, 公園内の私有地は少しづつ買収されていったが, 全部を買収することは当初から断念されていた。私有権の強固なアメリカの伝統を反映して, 私有地においては野外広告以外ほとんど規制されない状態が続いた。その結果, 特に第二次大戦以降, ディベロッパーによって細分化され別荘地として分譲されていくという無秩序な開発が問題となった。この間題に対処すべく1971年にアディロンダック公園事務所が設置され, ゾーニングによる私有地の土地利用基本計画が1973年に定められた。しかし, これは地元住民との対立を生じ, 地元経済の活性化と公園の自然環境保全の共存の道が探られるようになった。