著者
横本 真千子
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 = Economic Studies (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.27-43, 2014-12

1980年代からインドネシアは海外への労働者派遣を本格化させた。大多数は,アジア各国へ出稼ぎに行く女性家事労働者である。小論では,現在の募集・派遣ネットワークの歴史的形成過程と内在する問題点を指摘し,出稼ぎ国の香港での調査から,募集・派遣ネットワークがいかに彼女たちの就労に影響を与えているかを考察する。現在の海外出稼ぎの募集・派遣ネットワークは,募集人の村での活動や渡航費用の前借りなどの点で,政府が制度化に乗り出す前に農村において慣行化したインフォーマルな海外渡航ネットワークと似通っている。海外出稼ぎ女性家事労働者は,農村在住の募集人から海外出稼ぎの情報を入手し,仲介企業へと帯同される。彼女たちは,渡航前に渡航関連費用を工面する必要がないかわりに,渡航後およそ半年にわたって賃金のほぼ全額を渡航費用の返済に充てる。この募集慣行が,香港で働くインドネシア人女性家事労働者に他国の出稼ぎ労働者に比べて低賃金かつ悪条件での就労を強いる要因となっている。女性家事労働者は,香港での就業によって情報へのアクセスが可能になる。そして,海外出稼ぎ終了後,彼女たち自身が募集人となって渡航ネットワークの一端を担う。

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