著者
横本 真千子
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.123-138, 2013-02-21

インドネシアにおいて1980年代の経済成長期に女性の労働力化率が上昇したことを受けて, 富裕層世帯のみならず都市中間層の勤労者世帯とくに夫婦共働き世帯において, 家事, 育児, 介護を担う女性家事使用人への需要が増加している。こうした都市の女性家事使用人の需要を満たしているのが, 農村出身の女性である。農村出身の女性家事使用人が都市で働くための入職ルートとして仲介業者が存在する。実際に農村において家事使用人の調達をおこなうのは募集人である。若年で低学歴および縁故をもたない農村出身女性は正規の労働市場に参入することが困難であるため, 同郷出身の仲介業者と募集人による家事使用人の入職ルートによって都市への出稼ぎの機会を得る。 小論では, バンドンの女性家事使用人仲介業者とその募集人および50人の女性家事使用人を対象におこなったアンケート調査をもとに, 学歴や縁故を持たない農村出身の女性家事使用人の都市への入職ルート(仲介業者と募集人), 女性家事使用人の就業形態, 学歴および職歴構成, 女性家事使用人の出身農村世帯の家族・家計構成および出身地域の産業構造, さらにライフサイクルについて考察をおこなった。
著者
横本 真千子
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.27-43, 2014-12-09

1980年代からインドネシアは海外への労働者派遣を本格化させた。大多数は,アジア各国へ出稼ぎに行く女性家事労働者である。小論では,現在の募集・派遣ネットワークの歴史的形成過程と内在する問題点を指摘し,出稼ぎ国の香港での調査から,募集・派遣ネットワークがいかに彼女たちの就労に影響を与えているかを考察する。現在の海外出稼ぎの募集・派遣ネットワークは,募集人の村での活動や渡航費用の前借りなどの点で,政府が制度化に乗り出す前に農村において慣行化したインフォーマルな海外渡航ネットワークと似通っている。海外出稼ぎ女性家事労働者は,農村在住の募集人から海外出稼ぎの情報を入手し,仲介企業へと帯同される。彼女たちは,渡航前に渡航関連費用を工面する必要がないかわりに,渡航後およそ半年にわたって賃金のほぼ全額を渡航費用の返済に充てる。この募集慣行が,香港で働くインドネシア人女性家事労働者に他国の出稼ぎ労働者に比べて低賃金かつ悪条件での就労を強いる要因となっている。女性家事労働者は,香港での就業によって情報へのアクセスが可能になる。そして,海外出稼ぎ終了後,彼女たち自身が募集人となって渡航ネットワークの一端を担う。
著者
横本 真千子
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 = Economic Studies (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.27-43, 2014-12

1980年代からインドネシアは海外への労働者派遣を本格化させた。大多数は,アジア各国へ出稼ぎに行く女性家事労働者である。小論では,現在の募集・派遣ネットワークの歴史的形成過程と内在する問題点を指摘し,出稼ぎ国の香港での調査から,募集・派遣ネットワークがいかに彼女たちの就労に影響を与えているかを考察する。現在の海外出稼ぎの募集・派遣ネットワークは,募集人の村での活動や渡航費用の前借りなどの点で,政府が制度化に乗り出す前に農村において慣行化したインフォーマルな海外渡航ネットワークと似通っている。海外出稼ぎ女性家事労働者は,農村在住の募集人から海外出稼ぎの情報を入手し,仲介企業へと帯同される。彼女たちは,渡航前に渡航関連費用を工面する必要がないかわりに,渡航後およそ半年にわたって賃金のほぼ全額を渡航費用の返済に充てる。この募集慣行が,香港で働くインドネシア人女性家事労働者に他国の出稼ぎ労働者に比べて低賃金かつ悪条件での就労を強いる要因となっている。女性家事労働者は,香港での就業によって情報へのアクセスが可能になる。そして,海外出稼ぎ終了後,彼女たち自身が募集人となって渡航ネットワークの一端を担う。