- 著者
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佐々 真一
- 出版者
- 物性研究・電子版 編集委員会
- 雑誌
- 物性研究・電子版
- 巻号頁・発行日
- vol.4, no.1, pp.1-24, 2015-02
自然現象の背後にある単純な法則を見出し体系化するのが物理学である。現在、その体系は相当整備されているように見える。例えば、舞い落ちる銀杏の葉っぱを見てみよう。複雑によろめいているが、流体力学の方程式と境界条件で記述されるのは多分間違いない。あるいは、原子分子の世界でシュレーデンガー方程式の記述、いやいや、クォークの世界でゲージ場による記述…などもきっと正しい。現象の背後にある法則を求める場合、どこまで後ろにまわるのも自由であり、自分が好きなところで法則を書けばよい。こうしてできあがってきた基本法則群を眺めると、フロンティアは常にあるものの、物理学の牙城は万全なように見える。ところで、ある現象に対して、どの基本法則に拠っていいとしても、それらは同じ現象を記述しているはずである。その事実は説明できるのだろうか? そもそも、基本法則と基本法則を結びつける法則はどうなっているのか? 明日の研究にすぐに役立つわけではないが、普段考えないようなことをゆっくり学ぶ機会にしたい。