- 著者
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青木 聖久
Kiyohisa Aoki
- 出版者
- 日本福祉大学社会福祉学部
- 雑誌
- 日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
- 巻号頁・発行日
- no.133, pp.47-73, 2015-09
精神障害を有する本人(以下,本人)が暮らしを営むにあたって,障害年金を継続して受給するのは大切なことだといえる.ところが,就労したことによって,障害等級の級落ち(以下,級落ち)や支給停止になれば,暮らしに大きな影響を受けることになる.これらの状況をふまえ,本稿では,実際,障害年金が級落ちや支給停止になっている,あるいは,その可能性が高い状況にある本人の実態及びその後の相談体制,さらには,本人や家族が,障害年金や就労をどのように捉えているかを明らかにした.その結果,障害年金が級落ちや支給停止になっている者は6.7%いることがわかった.一方で,殆どの本人や家族が障害年金の意義を認めていた.また,就労についても,多くの本人や家族がその意義を認めていたものの,再発を危惧したり,障害年金の支給停止を気にしていることがわかった.そのため,就労に対して,ためらっているような意見も多く見られた.本稿では,生活支援に携わる者(以下,生活支援者)が,これらの複雑な想いを理解したうえで,本人や家族への直接的支援と共に,障害年金が使いやすい社会資源として位置付くように,社会へ働きかける等の間接的支援の取り組みが重要であるということを示した.