著者
松田 利彦
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文学報 = Journal of humanities (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
no.106, pp.53-79, 2015

特集 : 領事館警察の研究朝鮮総督府は,韓国併合当初から中国との陸接国境地域の治安を重要課題と見ていた。間島 地域では,総督府から憲兵と朝鮮人警察官を派遣・駐在させていた。在間島領事館の要請で憲 兵を治安維持のために派遣する場合もあった。他方,鴨緑江岸では,総督府の憲兵・警察官は 常駐しておらず,現地領事館との連携の度合いは小さかった。 とはいえ,基本的な行動の枠組みは両地域とも共通していた。憲兵による対岸地域の内偵や 組織的調査,憲兵・守備隊による対岸への出動と警察活動・軍事行動といった点である。総督 府・朝鮮憲兵隊は,豆満江岸(間島)・鴨緑江岸の両地域を一体の国境警備問題として認識して いた。 このような認識のもと,総督府は,1910 年代後半以降,国境警備体制の刷新に着手した。 1916 年秋,寺内正毅総督は,朝鮮軍守備勤務規定の改訂を通じて,対岸への憲兵・守備隊の越 境派遣体制を整備した。さらに翌年秋以降には古海厳潮朝鮮憲兵隊司令官・長谷川好道総督が 対岸に憲兵を常駐させる構想を打ちだす一方で,間島領事館に総督府から大量の警察官を送りこんだ。 1910年代は,20年代のように国境対岸からの武装抗日運動勢力による朝鮮内侵攻が現実的な 脅威となってはいない。しかし,国境対岸地域に対して直接的な警察力を行使しようとする総 督府の志向は,早くもこの時期に確認することができ,それは具体的な活動や構想として展開 していたのである。

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