著者
岩村 英之
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.48, pp.63-75, 2015-10

通貨同盟と財政連邦制をとる国家とは、単一の金融政策と複数の財政政策の組み合わせという点で類似している。そのため、欧州通貨統合の初期段階より、財政連邦国家のパフォーマンスにユーロの未来を投影し、また通貨同盟各国が満たさなければならない条件を導出することが試みられてきた。特に近年では、南欧諸国の政府債務問題を契機に、財政の分権化が地方政府の財政規律に与える影響に焦点が当てられている。本稿では、最初に分権化が財政規律に及ぼす影響についての理論的な議論を整理し、分権化は複数の異なるメカニズムを通じて正負両方の効果を持ち得るため、最終的な効果はすぐれて実証的な問題であることを確認する。そして、いくつかの代表的な実証研究を引きつつ、実証分析の結果を分ける3つの構成要素-(1)財政の分権化の数値化、(2)財政規律の数値化、(3)分権化と財政規律の関係の特定化-を抽出する。最後に、この3つの要素の観点から最近の実証研究の傾向をまとめ、分権化の効果についてはいまだ決定的な実証結果が提示されていないことを確認し、今後の方向性を示唆する。【研究メモ/Research Memoranda】

言及状況

Twitter (2 users, 2 posts, 0 favorites)

1 1 https://t.co/QifETEJq8O

収集済み URL リスト