著者
岩村 英之 李 嬋娟
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
明治学院大学国際学研究 = Meiji Gakuin review International & regional studies (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.1-24, 2020-10-31

本稿の目的は,異なる入学区分の学生の学修成果の違い,およびその背後にある学修能力の違いを検証することである。一般に,学力型入試と非学力型入試とでは選抜基準が異なるため,入学する学生の能力が異なる可能性が指摘され,それが入学後の学修成果にも影響する可能性が議論されてきた。本稿では,1996年4月から2015年4月までに明治学院大学国際学部国際学科に入学した学生の成績データを用い,入学区分と学修成果の関係を検証する。結果として,入学区分と入学後の学修成果の間に一定の関係が確認された。さらに,2014年4月の入学生については中学・高校時代の成績や学内外活動に関するサーベイ調査を実施し,中高での成績や課外活動が入学区分と関係する可能性,さらに大学での学修成果と関係する可能性を議論した。本論文の貢献は,入学区分と学修成果の関係を検討する際に時系列の傾向を確認することの重要性を示したことと,区分間の定員配分の変化が学生の学修能力に影響する可能性をデータ分析に基づき示したことである。
著者
岩村 英之
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.48, pp.63-75, 2015-10

通貨同盟と財政連邦制をとる国家とは、単一の金融政策と複数の財政政策の組み合わせという点で類似している。そのため、欧州通貨統合の初期段階より、財政連邦国家のパフォーマンスにユーロの未来を投影し、また通貨同盟各国が満たさなければならない条件を導出することが試みられてきた。特に近年では、南欧諸国の政府債務問題を契機に、財政の分権化が地方政府の財政規律に与える影響に焦点が当てられている。本稿では、最初に分権化が財政規律に及ぼす影響についての理論的な議論を整理し、分権化は複数の異なるメカニズムを通じて正負両方の効果を持ち得るため、最終的な効果はすぐれて実証的な問題であることを確認する。そして、いくつかの代表的な実証研究を引きつつ、実証分析の結果を分ける3つの構成要素-(1)財政の分権化の数値化、(2)財政規律の数値化、(3)分権化と財政規律の関係の特定化-を抽出する。最後に、この3つの要素の観点から最近の実証研究の傾向をまとめ、分権化の効果についてはいまだ決定的な実証結果が提示されていないことを確認し、今後の方向性を示唆する。【研究メモ/Research Memoranda】