著者
湯浅 陽一
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学人文学会紀要 = Bulletin of the Society of Humanities Kanto Gakuin University (ISSN:21898987)
巻号頁・発行日
no.132, pp.49-77, 2015

本稿では、英国における放射性廃棄物に対する取り組みの歴史を、民主主義と市場経済との関わりを基本的な視点として鳥瞰したうえで、日本の事例と比較しながら、同国の取り組みが抱えている課題を指摘した。まず、民主主義と市場経済という本稿の基本的な視点を提示したのち、第2節で、放射性廃棄物問題の概要を確認した。第3節では、英国における廃炉作業の概要をふまえつつ、とくに原子炉の型や作業の実施主体、そして作業費用の確保などに重点をおいた説明を行った。第4節では、英国における放射性廃棄物への取り組みとして、処分施設の立地選定が70年代から難航してきた経緯をみたのち、現在の立地選定手続きを日本のものと比較した。第5節では、実質的に唯一の候補とみられるセラフィールドを抱えるカンブリア州で、2013年1月に立地拒否の意思決定がなされたことをふまえ、同地域の経済的特徴をセラフィールドとの関わりから分析した。最後に、英国にせよ日本にせよ、民主主義および市場経済との関わりにおいて、地層処分の方法あるいは処理施設のための建設地探しは構造的な課題を抱えていることから、根本的な見直しが必要であることを指摘した。

言及状況

Twitter (2 users, 3 posts, 0 favorites)

2 2 https://t.co/tLJNbfwE8Y
1 1 https://t.co/8wxRiXhp4P

収集済み URL リスト