著者
中澤 務
出版者
関西大学文化財保存修復研究拠点
雑誌
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巻号頁・発行日
vol.4, pp.105-115, 2013-03-04

In this essay I discusss the academic debate called the Black Athena Debate. This debate was initiated by the publication of Martin Bernal's Black Athena in 1987. This book rejects the orthodox model that Aryans founded ancient Greek civilization and proposes a new model. Bernal agrgues that the orthodox model had been formulated through the many prejudices of modern Europe. I examine the debate in detail and conclude that Bernal's model has as many flaws and problems as his rival's model making both models untenable. However, Bernal's contention that the images of ancient civilization have been biased by many prejucices of modern Europe is Basically correct.この論文では、古代文明に対する歴史的なイメージ形成の問題の一環として、20世紀後半から繰り広げられている、いわゆる「『黒いアテナ』戦争」を追い、その意義を考察する。1987年に刊行が開始されたマーティン・バナールの『黒いアテナ』は、古代ギリシア文明の成立に関する学会の定説を覆し、その源泉は古代エジプトにあったとする新しいモデルを提示するだけでなく、現代の学説が信奉するモデルが、ヨーロッパの近代化の中でのアフリカや中近東地域に対する様々な偏見に基づくバイアスによって捏造されたものであると主張した。このバーナルの主張をめぐって、その妥協性を否定しようとする批判的議論が沸き起こった。たしかに、バナールの提示するモデルにも多くの問題があり、モデルをめぐる問題には決着が付けられない。しかし、この論争が持つ意義は、むしろ、過去の文明に対するイメージがいかに時代のバイアスを受けながら成立するかを浮き彫りにしたところにあり、この点にこそ、この論争の真の意義がある。

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