著者
中島 巖
出版者
専修大学経済学会
雑誌
専修経済学論集 = Economic bulletin of the Senshu University (ISSN:03864383)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.77-98, 2015-11

土星(Saturn)の第7衛星であるピペリオン(Hyperion)の予測不能な回転運動が天体力学におけるカオス運動の観測例であった。その後,最初に研究対象となったカオス運動発生可能なモデルの範疇は振動理論(theory of oscillations)からのものであった。その最初の一般的議論はロシア学派によって展開された。そこでは,理論に留まらず実験の過程をも含んだカオス運動発生モデルの実例がVan der Pol とVan der Mark によって提示されるに至った。1927年のことであった。現在マクロ経済学において重用されているHopf 分岐の議論は,上のVan der Pol の振動モデルから発想を得たものであった。Hopf 分岐は,非振動的運動からリミット・サイクル(limit cycle)運動が発生する可能性を説くものである。以下では,Van der Pol 方程式の例に拠りながらHopf 分岐が発生する過程を確認した後に,生産用役としての資本が利他的選好をもつ親世代から子世代へと遺贈されていく世代重複生産経済において,かかるHopf 分岐が発生するための条件を導く。若年者が賦存労働を自由に弾力的に供給し,生産を組織し,利他的選好をもつ老年者が自らの消費決定と次世代への遺贈水準の決定とを行っていく世代重複経済において,生産過程における労働・資本間の代替弾力性をパラメータとするとき,上の代替弾力性が経済の全所得のうちに資本所得が占める資本分配率を下回るとき,Hopf 分岐が発生し得ることが帰結される。

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