著者
佐藤 伸郎 サトウ ノブロウ Sato Noburo
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.143-161, 2016-03-31

森敦が提起した境界論を考察する。かつて龍樹は空を考察し、その実践方法として結跏趺坐を提起した。また、石津照璽は、第三領域を考察し、その実践方法として絶体絶命の生命的危機を提起した。宮澤賢治は、第四次を考察し、その実践方法として農業従事を提起した。筆者はこれまで石津照璽の第三領域、宮澤賢治の第四次を龍樹の空の読み替えと捉え、研究をおこなってきた。森の用語でいえば、空は現実である。現実は流動し、言語はそれを固定化させる。ここに本来の存在と認識に矛盾が生じる。ひとは存在として流動するものなのに、認識するにはそれを固定化するほかはない。森の境界論は、言語によって固定化された現実を、言語によって流動化させる方法である。森は、この方法によって、ほんとうの自己に到達しようと試みたのである。

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

佐藤 伸郎 -  森敦の文学 : 境界論をめぐる考察 https://t.co/kto2oLYMN2

収集済み URL リスト