- 著者
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落合 隆
- 出版者
- 中央大学人文科学研究所
- 雑誌
- 人文研紀要 (ISSN:02873877)
- 巻号頁・発行日
- no.81, pp.239-267, 2015
ルソー政治哲学を理解する鍵概念の一つが「一般意志」である。一般意志はルソーの発明にかかるものではなく,17-18世紀のフランスにおいて拡がった概念である。もともとアルノーやパスカルにあっては,一般意志とは,全ての人類を救済しようとする神の意志であった。マルブランシュは,神の一般意志に恩寵の法のみならず自然法則を含ませた。バルベイラック,モンテスキュー,ディドロらを通して一般意志概念は世俗化され社会化された。ルソーに至って人民の政治的意志となった。ルソーの一般意志には,市民が共通認識形成のために特殊意志を一般化する「一般性」のモメントと,市民が従う法を自らつくる「意志性」のモメントがある。ルソーは,主権者人民の一般意志によって,共通の安全のみならず各人の自由を実現する新たな結合およびその維持と,最終的には人類が自ら招き寄せた悪からの救済をめざす。