著者
坂 堅太 SAKA Kenta
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 = Bulletin of the Faculty of Humanities and Social Sciences,Department of Humanities (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
no.33, pp.21-30, 2016

戦後日本のプログラム・ピクチャーとして人気を博したジャンルに、サラリーマン映画がある。これを最も得意とした会社が東宝である。1951年に公開された「ホープさん」以降、プロデューサー藤本真澄、原作提供源氏鶏太という体制で東宝は数多くのサラリーマン映画を製作した。1956年公開の「へそくり社長」から始まる「社長シリーズ」が特に有名であるが、このシリーズの原型となったのが東宝サラリーマン映画第三作目の「三等重役」(1952年)である。戦前期に松竹が得意とした小市民映画など、「三等重役」以前のサラリーマンものでは、会社員生活の悲哀を強調するために、絶対的な重役とそれに媚びへつらう一般社員、というタテ関係の会社空間が描かれていた。それに対し「三等重役」は、戦後の民主主義的な価値観を背景として、重役と社員とが融和的で水平的な関係を結ぶ、家族のような会社空間を提示した。そしてこの作品が大ヒットした結果、小市民映画のような会社員生活の描き方は戦前的で時代遅れであり、戦後の現状を把握できていないものとして否定されてしまうことになる。「三等重役」の大ヒットは、サラリーマンの帰属すべき場所として「会社」というものが前景化されることにつながったが、それは夫=会社、妻=家庭というジェンダー規範を強化していくこととなった。

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