著者
並松 信久
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 = Acta humanistica et scientifica Universitatis Sangio Kyotiensis (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
no.49, pp.359-389, 2016-03

柳宗悦(以下は柳)は河井寛次郎や濱田庄司らとともに「民芸運動」を展開したことで著名である。その民芸運動の一環として柳は,戦前の日本人では珍しく,沖縄,アイヌ,台湾の文化に強い関心をもった。これらの地域は日本の「周縁」に位置付けられ,近代化が遅れているという理由で,低い評価しか与えられていなかったからである。柳は沖縄文化に着目し,その周縁の文化の豊かさに気付き,それらは日本の将来にとって重要なものであると説く。柳と沖縄文化に関する先行研究では,民芸運動において,柳による沖縄への関心がどのような意味をもったのか,そして沖縄のほうは民芸運動をどのように受け止めたのかは明らかになっていない。本稿では,戦時体制によって極端な集中化・画一化が進んでいくなかで,日本の周縁に注目する民芸運動は大きな変容を遂げ,そして沖縄という周縁の地域振興には有効ではなかったことを明らかにした。この根本的な要因は2 点ある。1 点目は沖縄の文化的な「個性」を重視した柳が,その個性は何に由来するのか明確に語っていない点である。これは柳が歴史性を重視していないことに由来する。2 点目は民芸の担い手である「民衆」のとらえ方である。柳における民衆は,本来は実存しない理念的概念であったが,それをそのまま実在の民衆に当てはめようとした点に問題があった。

言及状況

Twitter (1 users, 1 posts, 1 favorites)

CiNii 論文 -  柳宗悦と沖縄文化 : 周縁における民芸運動 https://t.co/LxZKxwHgEu

収集済み URL リスト