著者
服部 英雄 楠瀬 慶太
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.157, pp.277-297, 2010-03

1部(航海技術と民衆知)ではまず中世の文献資料を手がかりに航海技術を考えた。はじめに宣教師アルメイダ修道士の報告(1563年11月17日付書簡)に「日本人は夜間航海しない」とあることの意味を考えてみた。これは通常、夜間には労働をしないということと同等の意味にすぎないが、船を操る人は夜を避けた。特殊には、必要があれば夜間も航海する。ただし危険を伴った。つぎに治承四年『高倉院厳島御幸記』を検討した。貴族の場合、夜間航海はしない。夜間航海は危険があった。航海技術は潮の流れを見極め、時間調整をする。しかし毎日かならず朝に船出すれば、時間的に逆潮になることもある。その場合は沿岸流(反流)や微弱流・部分流にのって、人による漕力を駆使した。『大和田重清日記』でも、夜間航行は避けられている。『言継卿記』にみる伊勢湾航海は原則として潮に乗って、短時間に横断するが、潮の速さのみでは日記に記載された時間内に到着することは不可能だったから、風力と人力を必要とした。湾内南北通行の場合は、航海が長時間に及ぶため、潮が順である時間帯内に通過することは不可能であった。逆潮の航海も強いられている。1部後半及び2部では現地で聞き取った潮流と海の地名について具体的に(1)浜・磯(2)岬(3)山(4)瀬のそれぞれについて、長崎県平戸島春日・福岡県糸島半島の事例を報告した。瀬のようにつねに海中にあって、地図にも掲載されず、文字化されない地名がある(一部は海図に記載)。そうした海の地名は操業・山見・枡網(定置網)などの漁業に必要なものばかりで、民衆知(漁業技術)と一体化している。しかしじっさいには他人には容易には教えない個人知も一部にあって、共有されないものも含まれている。

言及状況

外部データベース (DOI)

Wikipedia (1 pages, 1 posts, 1 contributors)

収集済み URL リスト