著者
上野 和男
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.161, pp.39-60, 2011-03

本稿は、主として西日本地域に神社祭祀組織として広く分布する宮座について、とくに中国地方と北部九州の宮座を取り上げ、これを近畿地方の宮座と比較分析して、宮座の構造とその地域的変差を明らかにするとともに、宮座の現代的変化についても考察しようとするのが目的である。本稿で第一に論じたのは、宮座の概念についてである。本稿では、内面から、すなわち宮座の内部的な構造に立ち入って宮座を概念規定した。宮座は「一定の地域社会において当屋制を原理とする神社祭祀組織」である。宮座の内部構造に注目すれば、宮座は株座の形態をとるにせよ、また村座の形態をとるにせよ、対内的な家相互の平等性・対等性と、対外的な封鎖性排他性(ときには秘儀性)を特徴とする祭祀組織であると規定できよう。第二は、宮座の地域的多様性の問題である。宮座の地域的類型として、本稿では「家当屋制」と「組当屋制」を提示した。家当屋制とは、宮座のメンバーである家々の当屋順序を直接指定するような原理にもとづく当屋制であり、近畿地方の当屋制はこれにあたる。これに対して、組当屋制とは当屋順序がそれぞれの宮座メンバーの順序として直接指定しないで、地域、組などの順序に従って当屋の順序が間接的に規定している当屋制であり、兵庫県播磨地方以西の中国地方の宮座、北部九州国東半島の宮座がこれにあたる。第三に、宮座の現代的変化の問題についても論じた。中国地方や国東半島の宮座を通して明らかなことは次の諸点である。ひとつは、とくに人権思想平等思想の普及による株座から村座への変化である。ひとつは祭礼費用負担方法の変化である。特定の当屋が負担する「当屋負担型」から、全戸で平等に負担する「宮座負担型」への変化である。現代の宮座研究は今後とも宮座のこうした現実を直視しなければならない。

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CiNii 論文 -  宮座研究の歴史と現在--概念・当屋制・変化 (宮座と社会--その歴史と構造) https://t.co/RqK3gnuG5o #CiNii

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