- 著者
-
一瀬 貴子
- 出版者
- 関西福祉大学社会福祉学部研究会
- 雑誌
- 関西福祉大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:1883566X)
- 巻号頁・発行日
- vol.19, no.1, pp.11-20, 2016-03
社会福祉援助職従事者はストレスフルな職場で就労しているといえる.特に,社会福祉士は,支援困難事例に対処する場合,バーンアウトしやすい状況におかれるのではないか.本稿の目的は,①サービス介入が必要であるにもかかわらず,サービス介入を拒否する事例を抱えた経験のある社会福祉士のバーンアウトの実態を明らかにすること,②社会福祉士がとる対処スタイルとバーンアウトとの関連を明らかにすることである. 平成27 年9 月14 日から10 月15 日までの間にA県に所在する202 か所の地域包括支援センターに配置されている404 名の社会福祉士を対象とし,自記式質問紙調査を郵送法にて送付した.有効回答数は51 名(12.6%)であった. 全体的な傾向としては,顕著なバーンアウトの兆候を示しているとは言えない結果となった.ただ,個人的達成感が「注意」の範囲に入ることが分かった. バーンアウトの規定要因を明らかとするため,重回帰分析を行った.その結果,「色々な方法を試して一番良い方法を探し出した」「何が問題かを分析した」という『問題解決型』対処スタイルをとることは,脱人格化を減少させ,個人的達成感を高める作用があると明らかとなった.ストレッサーに対して直接働きかけ,どうにかしようと努力することは,バーンアウトの低減につながっているといえる. 「ぼうっとしてとりとめのない物思いにふけった」「不満や愚痴を誰かに話した」「スポーツ・趣味・グループ活動に熱中して嫌なことを忘れた」という『コミュニケーションによる発散型』対処スタイルは,脱人格化および情緒的消耗感を高めることにつながっている. また,「なるべく関わらないようにした」「睡眠安定剤を常用した」「うちにこもった」という『ストレス抑制型』対処スタイルは,情緒的消耗感を高めることにつながっている. つまり,回避・情動的な対処スタイルをとることで,バーンアウトが高まるといえる.