著者
柴田 伊冊
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.24, pp.14-31, 2012-03

1994 年のICAO(International Civil Aviation Organization)における自由化をめぐる世界規模での議論を踏まえ、米国を起点にした国際航空の自由化は世界規模で進行している。オープンスカイ政策によって、米国が世界に求めた自由化は、既存の二国間航空協定を改定する方法による自由化で、航空当局者ごとの交渉を通じて、米国への又は米国からの路線において波及的に国際航空の自由化を図ることであった。ICAO フォーラム(1994年)で提言された国際航空の自由化は、それぞれの国家の地勢と、既存の航空会社の競争力に応じて段階的に実現されるという視点に応じていたから、米国の方法は実践的であったことになる。 EU(European Union)域内では、英国やオランダなど自由化に積極的な国家と、ヨーロッパ統合という政治的主導によって自由化が進行した。EU 域内の航空会社は、英国航空(イベリア航空との統合で世界第7位の売上高 2010 年)を中心に、国家の介入による自国航空会社の保護育成という政策を脱し、かつ、インフラとして航空会社の運航を支える空港管理主体の民営化が進行して自由を基軸として統合された地域を伴う航空会社となった。それ以降、米国国内とEU 域内及び大西洋路線が、世界の航空の需要の大半を占めている事実から、米国とEC(European Community)の接続の形態が国際航空の次世代の原形となるとする見解もある。米国とEC という国際航空における自由化の核の外に位置する日本も国際航空路線の多くを米国及びEU 域内と接続しているために自由化を免れることができない。そして日本では第二次世界大戦の敗戦以降、米国の航空会社が運航の路線数や以遠において優勢であり、かつ隣接の中華人民共和国の航空の急速な発展に当面していることから、日本はここに至るまで自由化に慎重であった。 国際航空の自由化との関係で争点になるシカゴ条約前文の航空の機会均等は、これまでそれぞれの政府による、それぞれの締約国の航空会社の保護育成政策によって実効性が担保されていたのであり、国際航空の自由化の進行前においては、IATA(International AirTransport Association)によって世界規模で統一された手続によって運航に必要な条件が整備されながらも当該保護育成の方法は国家ごとに異なっていたから、オープンスカイ政策以降の自由化を意図する変革の方法と目的も国家ごとであり、世界規模では同一でない。それ故に、マランチェク(Peter Malanczuk)が多様化する国際公法の今後を「細分化」と称したように、国際航空の自由化についても、日本における「自由化」の意義を確定する必要がある。そして、それは緩やかな漸進的自由化であり、国家による統制の潜在化である。

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