著者
岡本 東三
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.276, pp.1-36, 2014-02-28

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 第276集 『型式論の実践的研究II』柳澤 清一 編"Pratical Study of Typology II", Chiba University Graduate School of Humanities and Social Sciences Research Project Reports No.276人生には、決して渡っては為らぬ川もあれば、時には渡らなければ為らない川もある。学問とて同じである。しかし、渡ることのできない川はないのだ。西部押型紋文化圏と東部押型紋文化圏との間には、大きな川が横たわっている。しかし、川向こうも同じ縄紋人の社会だ。同じ彫刻棒を原体にもった押型紋土器の世界が展開している。土器作りの作法は、カタチの流儀、文様の流儀、胎土の流儀の三つの要素から成り立っている。認定できる型式は、この三要素によって規定されるといっても過言ではない。西部押型紋文化圏も東部押型紋文化圏も、押型紋土器は平縁・尖底が基本であり、施紋法も共通する。土地柄が現れるのは、彫刻原体や器形の好みと地元の粘土や混ぜ物の違いである。当然、人びとは行き交い、文物も交流する。事実、東部押型紋文化圏の前半期には、西部ネガティヴ押型紋に関連する立野式も存在する。西部押型紋文化圏の後半期には、押型紋文化を表象するトロトロ石器が九州島にまで広く分布し、九州島の平栫式も出現する。また、押型紋土器終焉後には、早期の条痕紋土器・関東地方の鵜ヶ島台式もみられる。東日本同様、西日本にも条痕紋土器の世界が広がっていく。川向こうの土器は常に客体的であるが、西部押型紋文化圏だけが孤高を保っていた訳ではない。いずれの時期も同じように、開かれた縄紋社会が展開しているのである。これが縄紋社会の秩序というものであろう。前にも述べたことがあるが、「ルビンの壺」という有名な図形がある[第1図1]。白抜きの部分をみれば、優勝カップのように見え、黒抜きをみれば向き合った2人の顔が見えてくる。「図」と

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