著者
越中 康治
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.159-165, 2016

本研究の目的は、現場の教師や将来教員を目指している学生たちが道徳の教科化を好ましいと感じているのか否かについて、探索的に検討を行うことであった。教育学部生、保育者、小学校教員、中学校教員及び高等学校教員を対象として質問紙調査を実施し、①道徳の教科化、②道徳に検定教科書を導入すること、③道徳で評価を行うことのそれぞれについて、好ましいと思うか否かを尋ねた。また、現職者の一部に対しては、①〜③のそれぞれについて知っているか否かを尋ね、知っているか否かと好ましいと思うかの判断との間にどのような関係があるかを探った。その結果、主として次の2点が明らかとなった。第1に、道徳の教科化をめぐっては、当事者とも言える小学校教員及び中学校教員の9割近くが教科化そのものを知っており、道徳で評価を行うことについても知っていると回答したが、検定教科書の導入に関しては3割程度が聞いたことはあるがよくわからない状態にあった。また、保育者や高等学校教員においては、そもそも道徳の教科化自体について知らない、あるいはよくわからない状態にあることが示された。第2に、道徳の教科化をめぐっては、特に小学校教員及び中学校教員においてネガティブな評価が示され、教科化を好ましいとする者は2割に満たず、評価を行うことを好ましいとする者は1割にも満たなかった。他方、教育学部生及び保育者・高等学校教員においては、小学校教員や中学校教員ほどネガティブな評価は示されなかったが、その理由は、そもそも道徳の教科化に関してよくわかっていないからである可能性が示唆された。

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