- 著者
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石川 幹子
- 出版者
- 東京都立大学都市研究センター
- 雑誌
- 総合都市研究 (ISSN:03863506)
- 巻号頁・発行日
- no.59, pp.5-20, 1996
本論文は、都市の成長管理の系譜について、近代都市計画における緑地計画の歴史的変選の視点から考察したものである。拡大する都市の成長を如何に整序化し、制御するかは、近代都市計画における基本的テーマであった。成長管理からみた緑地計画は、パークシステム、田園都市論、リージョナル・プランニング、グリーンベルトの四つの類型に大別される。都市計画の手法として、法制度、財源を含めて、最も初期に成立したものが、アメリカで発達したパークシステムである。これは、公園緑地と広幅員街路という良質の基盤整備を行うことにより、計画的に市街地開発を誘導し、あわせて自然環境の保全、及び緑地の創出を行ったものであった。19世紀中葉から半世紀に及ぶパークシステムの実践を踏まえて、マスタープランに基づく都市計画の考え方が醸成された。イギリスで発達した田園都市論は、都市の適正規模と成長の道筋を示したものであり、1920年代のリージョナル・プランニングの形成に大きな影響を与えた。リージョナル・プランニングの考え方は、世界各国で独自の展開を経て今日に到っている。グリーンベルト施策により成長管理を持続的に行ってきたのがイギリス、自然保護と景域保全を基礎に、永続的土地利用をテーマに成長菅理施策の積み上げを行ってきたのがドイツである。アメリカでは、リージョナル・プランニングは大都市圏の拡張計画となった。日本では開発の制御及び緑地保全に関する損失補償及び財源確保に関する施策が立ち遅れたため、無秩序な市街地の外延的拡大を十分に制御することはできなかった。近年、アメリカでみられる成長官理は、伝統的手法に加えて、コミュニティの再編、エネルギー問題、持続的土地利用、地球環境の保全等の様々の問題に、まちづくりの視点から多様な施策を導入しているものである。また、日本においても、地方分権の動きを受けて、都市計画への市民参加が始まっており、緑地計画においても新しい萌芽がみられる。